話題の一冊
ベトナムのエリートたちがハングルを学ぶのは、韓国が好きだからではなくお金になるから
【新刊】イ・ミジ著『二つの顔のベトナム』パジット刊
記者になって10年目にベトナムでの現地生活を始めた著者は「ベトナムは韓国の1980年代にとどまっている貧しい国」という考えが古い偏見だと指摘する。1人当たりのGDP(国内総生産)は韓国の8分の1に過ぎないが、コロナ禍の前までは6-7%台を記録した高い経済成長率、統計に捉えられない水面下の経済規模、全人口の70%を占める青年層の中で留学経験と内需を支える富、愛国心まで備えたエリートにあふれるのが真のベトナムの底力だというのだ。
著者の日常の体験談に目を向けると「フォーとオートバイ」だけでベトナムを読み取ろうとしてきたこれまでのわれわれが、どれだけ狭い見識の中で生きてきたのかを悟ることになる。ホーチミン市2区に家を構えるに至った著者のストーリーを通じて社会主義国家であるにもかかわらず、30億ウォン(約3億4000万円)台のタウンハウスが飛ぶように売れるベトナムの不動産事情を知ることになる。そのほか、韓国が好きだからではなく、お金になるから韓国語を学ぶというベトナムのエリートたち、リサイクルはしないが「紙ストロー」など環境に優しい製品の製作には本気の現地人たちなど。「二つの顔のベトナム」をたっぷりと味わうことになる。296ページ、1万8800ウォン(約2100円)。
ユン・スジョン記者