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韓国の公捜処部長検事が暴露「政治的偏向・人事専横ばかりが思い浮かぶ」
韓国で幹部公務員の犯罪を専門に捜査する高位公職者犯罪捜査処(公捜処)所属の部長検事が公捜処の「政治的偏向」と「人事専横」を指摘する寄稿を行ったところ、公捜処が監察に続き、問題の部長検事を告訴することが11月29日までに分かった。法曹界からは「発足から3年間、公捜処が起こした問題を内部関係者が暴露し、公捜処が過敏反応を示している」と指摘する声が出ている。
金明石(キム・ミョンソク)公捜処人権捜査政策官は11月30日付の法律新聞に「政治的偏向と人事の専横」と題するコラムを寄稿した。 金氏は「検事17年、弁護士5年を経て、2022年10月に公捜処部長検事に任命され勤めているが、これまでの感想を述べるならば、政治的偏向と人事の専横という二つの単語しか思い浮かばない」と書いた。
金政策官は「本当に稀な経験をした」とし、自身の体験を綴った。金政策官は「政治的偏向」という小見出しの部分で「今年初め、『検察総長追い出し監察疑惑』に対し、検察が検察幹部2人の職権乱用疑惑を捜査し、公捜処に送致した」とした上で、「社会的関心度が高い敏感な事件なのに(呂運国=ヨ・ウングク=)次長検事は捜査経験のないA検事に事件を割り当てるよう指示した。おかしいと思った」と書いた。そして、「(呂次長判事が)私とA検事を呼び、『これはどこが職権乱用なのか』と言い、自分が事前に検索した判例など職権乱用の成立を否定する資料をA検事に渡し、検討報告書の作成を指示した」と暴露した。文在寅(ムン・ジェイン)政権当時の法務部が検察総長だった尹錫悦大統領を違法な形で監察したという疑惑に対し、公捜処が捜査に消極的だったという趣旨だ。これに対し、金政策官は「検事を17年間やってあらゆることを経験したが驚いた」と振り返った。
金政策官は自身が公捜処に任命される前にあった出来事にも言及した。金政策官は「『検察総長による判事査察文書作成』事件の場合、立件の是非について(ある検事が)否定的な意見を出すと、他の検事に検討させ、(その検事が)また否定的な意見を出すと、さらに他の検事に検討させるやり方で、複数の検事を経た結果、やむを得ず立件したというので冗談かと思った」と書いた。尹大統領が検察総長時代、懲戒事由の一つとして監察を受けた事件に対しては、公捜処が積極的に捜査を行ったことになる。
金政策官は「まだ捜査に着手してもいない事件について、結論ありきでその結論に合わせるように上述のような言動をするというのは驚くばかりだ」と指摘した。
金政策官はまた、「人事の専横」という小見出しの部分で「公捜処の構成員は求人市場に出ている人足のような心情で過ごす」とし、「ある日出勤すると、前日退勤以後に人事異動が公示されており、そんな公示が頻繁にあった」と話した。さらに「チームワークが形成されるはずがなく、紛争が絶えず退職者が続出している」とし、「平検事をちょっと務めて辞めて弁護士をやっていた人物が部長検事としてやって来て捜査を指揮するので、方向性を失い大騒ぎだ」と現状を語った。そして、「検察では起きるはずがないコメディーのような出来事がやたら起きているが、方向を定めなければならない公捜処長、次長もまた経験がないので、よくやっていると思っている。全体的な危機だ」と述べた。
金政策官は「こんなことを3年間経験した公捜処の構成員たちは心の病気に患ったままだ。大部分は既に辞めた」とした。そして「(来年1月には)次期公捜処長・次長が任命されるという。どうかせめて正常な組織になってほしい」と述べた。
これに対し、公捜処は「金政策官が外部に寄稿をする際、公捜処長にあらかじめ届け出なければならないという規定を破ったため、金鎮煜(キム・ジンウク)処長が監察を指示した」とし、呂運国次長は金政策官が事実と異なる内容を公表して名誉を傷つけ、公務上の秘密を漏らした疑いがあると判断し、金政策官を他の捜査機関に告訴することを決めたと発表した。
金政策官は司法試験第40期出身で、ソウル東部地検検事、議政府地検副部長検事、水原地検城南支庁副部長検事などを務めた後、弁護士を開業。昨年10月に公捜処に入り、捜査第1部長検事を経て、現在人権捜査政策官を務めている。
イ・スルビ記者、兪鍾軒(ユ・ジョンホン)記者