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中国「古い友を失った」、台湾「中国の代弁者」 キッシンジャー氏死去受け
「中国人民の古い友」と呼ばれるヘンリー・キッシンジャー元米国務長官(100)が11月29日(現地時間)に死去したことを受け、中国国営メディアは「駐米関係の証人が去った」として彼の生涯を大きく取り上げた。中国指導部が最も信頼する米国人だったキッシンジャー氏は1970年代に「米中デタント(緊張緩和)」の基盤を築いた主役であり、米国政府から去った後もたびたび中国を訪れていた。
11月30日に中国国営中央テレビはキッシンジャー氏の生涯を振り返る1分57秒の映像を放映し「キッシンジャー氏は中米関係発展を示す生きた化石だった」「彼はニクソン大統領の中国公式訪問を実現させ、世界を揺るがした『太平洋を越えた握手』をもたらした」と評した。中国新聞網は「キッシンジャー氏は生前中国を100回訪問した」「中米関係の生き証人」とした上で「彼は政治家としての生涯をささげて中米関係のため傑出した貢献を果たした」と高く評価した。
キッシンジャー氏はわずか4カ月前の7月20日にも中国を訪問していた。当時習近平・国家主席は北京の釣魚台国賓館でキッシンジャー氏を迎え、「老朋友(古くからの友人)」と呼び「中米関係を正しい軌道に戻すため建設的な役割を果たしてほしい」と要請した。
これに対して米中関係の改善で国際社会から孤立するようになった台湾はキッシンジャー氏を否定的に評価している。台湾聯合報は「冷酷な米国務長官から熱誠的な中国の代弁者となった人物」「中国は世界を支配する考えなどないと誤解していた」と批判した。台湾中央通信社は「キッシンジャーは『答えがない』という言葉で台湾問題を説明した」と強調した。
米ニューヨーク・タイムズは「毛沢東の時代から習近平の時代まで、中国の歴代指導者全員と交渉した唯一の米国人」としながらも「キッシンジャー氏ほど大きな賛辞と批判を同時に受けた外交官も珍しかった」と評した。米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」は「キッシンジャー氏は中国の大門を開いたが、中国の影響力を拡大させる代弁者になったとの批判も受けた」と指摘した。日本経済新聞は「キッシンジャー氏が米中国交正常化に道筋をつけたことは台湾問題の起点になった」と解説した。
北京=イ・ボルチャン特派員