【ソウル聯合ニュース】日本による植民地時代に朝鮮半島から徴用された労働者を象徴する像(労働者像)を制作した韓国の彫刻家夫妻のキム・ウンソン氏とキム・ソギョン氏が、像のモデルは日本人だと主張した元大田市議会議員の金素延(キム・ソヨン)弁護士に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決で、大法院(最高裁)は30日、原告の一部勝訴とした二審判決を破棄し、審理を議政府地裁に差し戻した。

 金元市議は2019年8月に交流サイト(SNS)と報道機関向け資料を通じ「労働者像のモデルは1926年、日本で労働を強いられた後に解放された日本人」と主張した。これにキム氏夫妻は虚偽事実の摘示、自身らの名誉を毀損(きそん)する行為だとして訴えを起こした。日本人がモデルではないと反論したものだ。

 一審はキム氏夫妻の損害賠償請求を棄却したが、二審は金元市議の発言を「断定的かつ具体的な事実の摘示であり、その内容は事実と異なる虚偽に当たる」と判断し、同元市議にキム氏夫妻それぞれへの200万ウォン(約23万円)の慰謝料支払いを命じた。

 一方、大法院はこの日、金元市議の発言は「労働者像が日本人労働者の写真に酷似しているという意見を表明したもの」とみる余地があると指摘した。芸術作品がどう見えるかは作品が外部に公開された瞬間から鑑賞者の主観的な評価の領域に置かれるとし、「すぐさまこれを具体的な事実の摘示として名誉毀損の成立要件を満たすと評することに、慎重を期す必要がある」と述べた。

 似ていると指摘された日本人の写真が、徴用された朝鮮人労働者として韓国の教科書などで長い間紹介されてきたとも言及。金元市議としては自身が主張する内容を真実と信じるだけの理由があったとした。

 大法院はこの日、同様の問題でキム氏夫妻が李宇衍(イ・ウヨン)落星台経済研究所研究委員を相手取った損害賠償請求訴訟でも同じ趣旨の判断を示した。原告敗訴の二審判決が確定した。李氏は韓日でベストセラーとなった「反日種族主義」の共著者として知られる。

 キム氏夫妻は労働者像のほかに、旧日本軍の慰安婦被害者を象徴する「平和の少女像」の制作も手掛けてきた。

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