金融・財政
法定最高金利引き下げの逆説…韓国の庶民100万人が違法貸金業者に殺到する事態に
韓国・全羅北道群山市で日雇い労働に就いているKさん(31)は最近、生活費に困り貸金業者を訪ねたが融資を断られた。過去には貸金業者から300万~400万ウォン(約35万~46万円)を3~4回借り入れ、延滞せずに全額返済したが、現在固定収入がないことが問題だった。Kさん「審査が以前よりはるかに厳しくなった」と話した。
高金利と物価上昇で庶民の暮らしが厳しくなっているが、庶民が急な借り入れを行う貸金業者、貯蓄銀行の融資のハードルはますます高くなっている。法定最高金利が低すぎるため、営業に行き詰まった貸金業者が廃業したり、無担保融資を大幅に減らしたりしているためだ。景気低迷で延滞率が上昇し、融資審査が厳しくなったことも関係している。年末を控え冬越えの準備をしなければならない人、急に生活費や医療費が必要になった人などが行き場を失うことが懸念されている。
■貸金業者、資金難で新規融資中断
大手貸金業者A社は過去1年間、新規の無担保融資を事実上中断した。月間貸出件数がゼロだったのが4カ月。300万ウォン以下の少額融資が1件だけという月も2カ月あった。A社は2~3年前まで月平均600億~800億ウォンの新規融資を行っていたが、今は融資を増やさず、既存融資を回収することだけに集中している。A社関係者は「担保のない個人向け無担保融資は開店休業状態だ。当分無担保融資を増やす計画はない」と話した。
貸金業者は年20%の最高金利では正常な融資営業ができないと主張する。業界によると、大手貸金業者が貯蓄銀行などから資金を調達する際にかかる平均費用(金利)は年8~9%になる。貸金業者の平均延滞率が8%前後となり、会社の運転費用が7.5%程度かかることを考慮すると、金利が年23~24%なければ融資は不可能だ。A社関係者は「コストをどうにか減らそうと今年初めに従業員全体(295人)の約半分(145人)を希望退職で削減したが、依然として状況は厳しい」と話した。
それでもA社は大手なので恵まれている方だ。中小貸金業者のB社による調達金利は年11~12%で、A社を2~3%上回る。B社の経営者は「既存顧客が返済する金額の一部を財源に新規融資を維持している。貯蓄銀行が新規貸出債権を担保に融資してくれるので、少しでも融資を行っている」と話した。
韓国政府は2021年から優良貸金業者が銀行から低金利で資金を調達することを容認したが、有名無実の状態だ。優良業者とされたC社の代表は「銀行が貸金業者に融資すれば評判が悪くなるという理由で融資を拒否している」と話した。
貸金業者の経営難が深刻化し、廃業が加速している。金融監督院によると、08年の金融危機直後、1万6000社を超えていた貸付業者数昨年末には約3分の1の5582社に急減した。
■違法貸金業者に殺到する庶民
貯蓄銀行も不動産のプロジェクトファイナンス(PF)の不良債権化と景気悪化などで健全性管理が課題となり、低信用者への融資を減らしている。5大貯蓄銀行の今年4~6月の不良債権は2兆5070億ウォンで、昨年末(1兆7979億ウォン)より7091億ウォン(39.4%)増えた。中小貯蓄銀行D社の関係者は「高金利が長期化し、今年は借金を期限までに返せない顧客が大幅に増えた。延滞率を下げるために下半期から新規融資を半分以上減らしている」と話した。
融資窓口が閉ざされ、庶民は違法貸金業者を利用するしかなくなっている。会社員Lさん(33)は、個人再生手続き中だという理由で最近貸金業者から融資を断られた後、融資仲介サイトで年200~300%以上の利子を要求する融資先を調べている。Lさんは「すぐに資金を確保できる場所がなくて途方に暮れている」と話した。
貸金業界では19年から22年までに廃業した貸金業者を利用していた120万人のうち97万人(80%)ほどが違法貸金業者を利用しなければならない立場に追い込まれたと推定している。庶民金融研究院が昨年貸金業利用者約3500人を対象に調べた結果、14%が貸金業者に融資を断られた際の選択肢として、「違法貸金業者を通じ、資金を確保する」と答えた。また、違法貸金業者利用者315人を調査したところ、年1200%を超える高利子を支払った割合が10.8%に達した。
金智燮(キム・ジソプ)記者