▲イラスト=UTOIMAGE

 最近中国の習近平国家主席の「女性観」を垣間見ることができる席があった。10月30日の中華全国婦女連合会指導部との会談でのことだ。習主席は女性が質の高い発展や農村振興を促進する上で長所を発揮し、積極的な役割を果たせるようにすべきだとした上で、「家庭が円満で、家庭教育が良好で、家風がきちんとしていてこそ、子どもが健全に成長でき、社会が健全に発展できる」と述べた。つまり、女性が社会に貢献する道は家庭にあるということだ。

 習主席はそれにとどまらず、女性の役割は家庭内に限られるという点を改めて強調した。「女性が中華民族の伝統的な美徳を発揚し、良好な家風を打ち立てる上で独特の役割を果たせるよう導くべきだ」とし、「『女性の仕事』をしっかりすることは、女性自身の発展だけでなく、円満な家庭、社会の調和、国家発展、民族の進歩にも関わってくる」とも述べた。

 習主席がそうした女性観を強調したのは、少子化打開のためだ。ニューヨークタイムズは「人口統計学的危機、経済低迷などに直面した共産党が女性を家に再び押し込み、子供を養育し、高齢者の世話をすることを求めた」と伝えた。習主席本人の発言がそうした解釈を裏付けた。女性を家庭に戻そうとする理由として、「若者の結婚恋愛観、子育て観、家族観に対する指導を強化し、人口高齢化に積極的に対処しなければならない」と発言したのだ。

 実際に中国の少子化は深刻な状況だ。中国の新生児数は2016年の1880万人から昨年は956万人へと半減した。1000万人以下に落ち込んだのは、1949年の新中国建国以来初めてだ。このため、中国の人口は昨年末現在で14億1175万人となり、前年に比べ85万人減少した。こうした傾向によって、中国の労働人口の割合は約10年前の70%から昨年は62%にまで低下した。「人口大国」の看板も宿敵インドに明け渡さなければならなかった。

 状況の緊急性は分かるが、少子化対策として「女性の家庭復帰」を掲げたのは時代錯誤だ。子育ての責任を女性にだけ負わせるという点、そして女性の社会進出を制限するという点で過度に家父長的だ。米国の非営利団体フリーダムハウスの王亜秋・中華圏調査責任者は「中国の女性たちは既に数年前から権威主義の政府と家父長的な社会という抑圧に対抗するために団結してきた」と話した。

 実現可能性も低い。経済的に非合理的な選択だからだ。片働きが一般的だった時代、夫婦共に仕事場に向かったのは、他人より豊かに暮らすための彼らの選択だった。しかし、今は共働きが基本の時代だ。そこで女性が所得をあきらめて家に帰るなら、他人より貧しくならざるを得ない。女性の社会参加を法律で禁止できるのでなければ、家庭復帰を選択する女性がどれほどいるのか疑問だ。これには男性も反対するだろう。

 最近中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」で、ある35歳の女性が検索ワード上位にランクされた。現在香港でタイル職人として働いているという彼女は、6年前に建設現場で月給700元(約1万4600円)で働き始め、今は月に10万元を稼いでいるという。彼女が懸命に働く原動力は12歳の息子だ。中国のネットユーザーは多額の収入をうらやましがりながらも「大した母親だ」「職業から性別の区分は消えた」と賛辞を送った。中国人の考え方は変わっているが、彼らの指導者は時代に追いつけていない。

北京=イ・ユンジョン特派員

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