▲恨みたい相手を思い浮かべながらストレス解消。「呪いのわら人形」の販売元が掲載した写真/インターネット・キャプチャー

 カナダのウィルフリッドローリエ大学の研究陣は、「呪いのわら人形」に向かって腹を立てると、そうでないときに比べて実際のストレス数値が下がるという事実を実験で証明し、2018年に「イグノーベル賞(人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究に与えられる賞)」を受賞した。「仮想の復讐に価値がある」というわけだ。ただし亜州大学心理学科のキム・ギョンイル教授は「人形が呪いの対象とあまりにも同じ姿をしている場合、効果はむしろ半減する可能性がある」と助言する。昨年出版した書籍に掲載された「呪いのわら人形、本当に効果があるのだろうか」という文章だ。「呪おうとする人とそっくりな人形にピンを刺すと、その人に本当に物理的な傷害を与えているようで罪悪感を感じることがあるからです。つまり、自分自身をコントロールできず、行き過ぎた行動を取ったのではないかと後悔することで、心が浄化されるよりもかえって気分が悪くなることもあります」

■呪い、合法と不法の間

 「呪いのわら人形」の販売者側は、「効果は立証されていない」と逃げ道を設けながらも「呪う相手の髪の毛、または爪、あるいは生年月日が書かれた紙と一握りのお米を袋に入れて人形と一緒に縛れ」という根拠のない使用方法を掲載したり、「鋭いくぎやはさみで痛みを与えるような思いで刺せ」などと刺激したりする。何ともふに落ちないが、このような呪いは刑事処罰の対象にならないというのが法曹界の判断だ。法務法人のスアン・チョソンウ弁護士は「一人で人形に呪いをかけるだけでは相手に対する害悪が告知されず、脅迫罪などが成立しない」としながらも「ソーシャルメディアなどを通じて相手を特定できる手がかりが写真や映像で流通される場合、侮辱罪として処罰される恐れがある」と説明する。

 時には公開的に呪いが行われることもある。今年2月、ある左派市民団体は、大統領の顔写真を貼った人形におもちゃの弓を射る「尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に弓を射る」という呪いのイベントを開催したことで市民たちの反感を買ったほか、昨年の大統領選挙期間には反対陣営のある支持者が「これから五殺儀式を始める」とし、尹大統領をモチーフした人形を鋭い凶器で刺し通す写真をフェイスブックに掲載。大きな問題となった。批判が激しさを増したことで、ネット上の内容は削除された。

■呪いとは2度にわたって墓を掘る行為

 呪い(韓国語でチョジュ)を反対に書くと「躊躇(チュジョ)」になる。「殺したいくらいに憎い人がいるから購入したが、いざ商品を受け取ってみると呪いをかけるかどうか迷ってしまいます。怒りが収まったら、自分自身のために祈ろうと思います」。復讐の旅に出る前は、二つの墓を掘れという逸話がある。誰かを傷つけようとするとき、自分もけがをする恐れがあるというわけだ。「本当にここまでしなければならないかと思いながらも、私を苦しめた人間のために注文しました。ところで呪いをかけようと思い立った瞬間から、ずっと体の調子が良くありません」。否定的な気運が全身を支配したためだ。

 呪いのわら人形は古今東西を問わず長い歴史を有しているが、常に災いと共にあった。燕山君の母親であるペビ・ユン氏、粛宗の側室であるチャン・ヒビンなどが呪いのわら人形で悪行を行い、死薬(死刑の際に飲ませる薬)を飲まされたと伝えられている。「世宗実録」にも身の毛のよだつような記録が残されている。1424年、いとことの不倫が公になることを恐れ、夫を殺そうとした済州島の女、チャンイ(長伊)。夫の髪の毛と草で巫女(みこ)にわら人形を作らせ、全身にユズのとげを刺し、3日以内に急死するよう書いた呪いのお札まで使って神堂の下に埋めた。夫は数日もしないうちに亡くなったという。しかし結局、犯行は発覚し、チャンイは凌地(りょうち)処死(徐々に痛みを伴う処刑)に処され、共謀者たちも大きな罰を受けた。

チョン・サンヒョク記者

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