▲脱北民強制送還非常対策委員会は10月31日午後、ソウル汝矣島の国会で中国国内の脱北民強制送還問題の解決を求める記者会見を行った。/NEWSIS

 中国に拘禁されている数百人の脱北民が先月北朝鮮に強制送還されたことが伝えられているが、これについて中国政府は「全く根拠がない」として国連に対してこの問題を公式に否定した。中国はさらに「北朝鮮で拷問、あるいはいわゆる『大規模人権侵害』が行われているという明確な証拠はない」として国連の拷問等禁止条約など国際法違反の指摘にも反論した。

 国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)がホームページで公開した書簡によると、中国政府は今年9月31日「中国は北朝鮮からの『不法入国者』問題について、国内法と国際法、人道主義を順守している」と主張しているようだ。今年7月にエリザベス・サルモン国連北朝鮮人権状況特別報告者らは「中国は恣意(しい)的に拘禁した2000人の脱北民を強制送還する可能性がある」と指摘したが、これに対して中国は2カ月後に上記のように反論したのだ。

 中国は1951年に制定された「難民の地位に関する国連条約」と「難民議定書」(67年)の当事国だ。ところが脱北民については「難民ではなく不法に国境を越えてきた者」と見なし、定期的に強制送還を行ってきた。先月9日に杭州アジア大会が閉幕した直後に多くの脱北民を一気に強制送還したケースはその典型的な事例だ。国連は「中国は2000人の脱北民を拘禁している」と主張しているが、これに対して中国は上記の書簡で「全く根拠がない」と反論した。

 国連の拷問等禁止条約は「いかなる当事国も拷問を受ける危険性があると信じるに足る相当な根拠がある他国に個人を追放、送還、引き渡してはならない」と定めており、国際社会はこれに基づき中国による強制送還を強く批判してきた。ところが中国は「北朝鮮でいわゆる『幅広い人権侵害』が発生している証拠は現時点ではない」「拡大解釈すべきではない」とこれに反論している。これに対してある外交筋は「2014年に北朝鮮における人権侵害の実態を暴露した『北朝鮮における人権に関する国連調査委員会(COI)報告書』など、(中国は)国際社会のコンセンサスを正面から否定している」と批判した。

金隠仲(キム・ウンジュン)記者

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