2010年に完成してから世界で最も高い高層ビルの座を守っているアラブ首長国連邦(UAE)ドバイのブルジュ・ハリファはサムスン物産が施工した。韓国の建設会社の能力は世界最高水準だが、国内では現代産業開発、GS建設など財閥系一流企業の現場ですら原始的な思考が続いている。韓国政府は処罰強化、国土交通部・韓国土地住宅公社(LH)退職後の天下り制限強化、管理監督官庁の設置といった実効性が疑われる対策を弄している。

 根本的な問題は低価格発注、低価格受注にある。LHは「安価で良質な」庶民向け住宅を建てて供給するという「ミッションインポッシブル」を担当しているが、その落札金額がまともな仕事をすることは難しい水準であるため、サムスン、現代、GSなど一流建設会社は原則的にLHの仕事は引き受けないほどだという。公共部門が発注する工事の入札で過去の受注実績が重要視される入札制度も低価格受注をあおる。先進国のように企業が保有する技術人材のトラックレコードと能力の評価割合を高めるべきであり、収益性指標も資格評価に反映されるべきだ。

 LHは元は設計、施工、監理を全て直接担っていたが、今は圧倒的な規模の発注者へと変貌した。設計、施工、監理を全て外注しているが、それが民間企業より効率的だという証拠はない。LHはマンション建築分野で最も多くの仕事を発注すると同時に、大規模な宅地を供給する絶対的強者になった。建築・建設分野で絶対的権力を握ったLHが腐敗するのは必然であり、元官僚の天下り採用が蔓延するのも当然の帰結だ。

 LHがなければ国が滅びるというほどの強い存立根拠を示せない限り、LHも民営化しなければならない。農地、林野の転用を容易にし、民間建設会社がもっと容易に土地を確保できるようにすれば、LH(旧土地公社部分)にだけ特権を与える方式よりましだろう。ひどい言い方をすれば、LHは土地供給規制に寄生している。他国にもこんな組織はあるのか。民間資本誘致で高速道路、橋梁、トンネルを全て建設できる時代なのに、効率性で劣る道路公社がなくても構わないのと同じだ。

 天下り、不正腐敗に対する疑いの目を避ける上では最低価格落札方式が安全だ。低価格受注を挽回するためには低価格で下請けさせるのが最も単純な方法だ。土木、構造、機械、電気、通信などの各分野で下請けの下請けが連鎖すれば、元官僚が介入する機会はさらに増える。外注、下請け自体が悪いというわけではない。受注を取ってきた人物、仕事の配分に影響を及ぼす人物が実際に仕事をする人よりもあまりにも多くの権益を握る構造が固定している国で、このようなレントシーキング勢力(自分に都合よく法制度や政策を変更させ、利益を得る勢力)の権益を減らすには、下請け、孫請けを減らそうとする努力が必要だという話だ。先進国では重要工事の直接施工を法制化するケースもある。

 建築物が日増しに高層化、地下化する時代に建築士が代表を務める建築士事務所のみが建築設計を行えるという規制は時代錯誤だ。建築士はどこに所属していても建築物の設計ができなければならない。大規模建設会社が建築士(architect)はもちろん、土木、基盤、構造、機械、電気など各分野のエンジニアを従え、直接設計と施工ができなければならない。設計、施工、監理を能力がある単独企業に委ねるのか、切り離して発注するのかは、発注者の選択に任せるべきだ。権限の分離はけん制には役立つが、責任の分散を招く。施工経験の多い人材が設計にも参加し、設計した人材が施工にも関与する方が効率的であり、責任の転嫁、回避ができなくなるメリットもある。分離もけん制も米ベクテルのような世界的な建設会社を誕生させる範囲内でやろうという話だ。米国にない規制はひとまずすべて撤廃してみようではないか。

 長期間を要する人材育成においては問題がさらに深刻だ。能力があるエンジニアがまともな待遇を受けられないため、エンジニアを志す人が減っている。建築工学科、土木工学科を卒業して技術士試験を受けても合格率が低く、報酬も大したことはないため、能力がある若者が土木、建築を学ばなくなっている。このままでは韓国の建設業は人材不足で自ら沈滞を招くことになる。現場の労働者も安い外国人にますます依存しており、手抜き工事の一因になっている。人材対策が急がれる。

 建設会社とエンジニアリング会社の仕切りだけでなく、設計、施工、監理を仕切る規制を減らすとともに、低価格による発注、受注を防ぐ構造的、制度的改革が求められる。良質な発注者も低価格受注はしないという決意を持つ建設会社も必要だ。

朴炳元(パク・ピョンウォン)安民政策フォーラム理事長・韓国非営利組織評価院理事長

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