▲国民の力の金学容議員が10日、文在寅政権当時の不動産統計操作の当事者というボードを掲げ、質疑を行っている/NEWSIS

 記者は宿命的にうそを聞く。取材源が意図的にうそをつけば、ファクトを見分けることさえ難しいことがある。特に信頼される機関や官庁がもっともらしい根拠で言い張れば、難関にぶつかる。文在寅(ムン・ジェイン)政権の不動産統計がそうだった。同じ住宅価格でも民間のKBによる統計を見れば市場が過熱していたが、政府系の韓国不動産院による統計はわずかな上昇にとどまった。理由を尋ねると、不動産院は専門調査員が主に実勢価格に基づく「取引可能価格」を算出するのに対し、KB不動産は公認仲介士が言い値を入力する方式だからだと話した。さらに不動産院は幾何平均、KB不動産は算術平均を採用しているというテクニカルな話まで織り込み、取材は迷宮入りした。疑わしかったが、まさか統計まで操作しているとは思わなかった。監査院による調査の結果、青瓦台と国土交通部の圧力で不動産院がいったん調査した上昇率を人為的に下げ、後には標本調査もせず任意に数字を当てはめた。高度な統計手法の違いなどはなかった。ただ統計を操作しただけだ。

 文在寅政権下では住宅価格を巡る市民団体・経済正義実践市民連合(経実連)と青瓦台の関係もミステリーだった。2021年6月、政府が直近4年間で住宅価格が17%上がったと発表すると、経実連は相場ベースで79%上昇したと反論。「大統領と青瓦台はこれ以上国民を欺かず、密室統計、操作歪曲(わいきょく)統計を是正すべき」と迫った。いくら経実連が革新陣営の市民団体だとしても、そんな不敬な主張に猛反発して当然だった青瓦台は何の反応も示さなかった。このミステリーも監査院の調査で解明された。その1年前、経実連は当時の金賢美(キム・ヒョンミ)国土交通部長官が「この3年間のソウルの住宅価格上昇率は11%」と発言すると、それに反論して金長官の更迭を要求した。青瓦台の金尚祚(キム・サンジョ)政策室長は「経実連の本部長が騒ぐときには強く反論しろ」と国土交通部の官僚を叱責した。その官僚が「国民が体感できない部分があり、反論すれば攻撃を受ける恐れがある」と言うと、金室長は「そんなに消極的なのか」と不満を示した。1年後にも同じことがあったが、金室長は自身の不動産問題で更迭された後だった。名分も悪役も青瓦台には残っていなかった。

 21年7月には不動産院がマンション価格統計の標本数を2倍(3万5000件)に増やすと、首都圏のマンション相場が瞬く間に約20%上昇した。サンプルを増やしたからといって、住宅価格が1カ月で過去1年間の値上がり幅の4倍も上昇するとはあきれた。不動産院は「標本価格の現実化」「標本の見直し」だと言った。しかし、それは言葉遊びにすぎなかった。継続的に統計を操作した結果、現実とあまりにも乖離(かいり)してしまい、やむを得ず一気に修正作業を行ったのだ。これまで実務担当者は不動産統計を操作しようとどれだけはらはらしていただろうか。気の毒な気さえした。

 文在寅政権で「所得主導成長」に役立たない分配悪化を示す統計が出ると、黄秀慶(ファン・スギョン)統計庁長は更迭されたが、離任式でずっと泣いていた。見当はついたが、裏事情は取材できなかった。監査院の調査によれば、当時青瓦台経済首席秘書官は統計庁公務員を青瓦台に呼び、徹夜で統計操作を試み、その席には後任庁長になった大学後輩が同席していた。一部の統計庁職員は黄庁長を飛び越え、青瓦台とと直接やりとりした。

 歴代政権も少しずつ統計に手を加えたが、文政権のように露骨で直接的ではなかった。経済を担当する政権首脳部が大挙介入し、自ら改正した統計法に違反してまで操作を行ったことも前例がない。こんな真っ赤なうそが遅ればせながら明らかになったことは幸いだ。

朴宗世(パク・チョンセ)論説委員

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