▲ソウル市内の大手スーパーにある日本ビールの売り場。2023.10.2/写真=聯合ニュース

 高校の同窓生C氏としばしば、彼の家でビールを飲む。味の好みが似ているからだが、日本のビールにフライドポテトを添えて飲むのを特に好む。あえて日本のビールなのは、ドライでほろ苦い日本ビール特有の味を好んでいるからだ。日本語で「辛口」と表現しているその味だ。少し前にも一緒にビールを飲んだが、彼が「ノー・ジャパン」の話を切り出した。韓国で「ノー・ジャパン」の気運が盛んな時期、コンビニから日本のビールが全て消えて残念に思っていたという。「このごろはどのコンビニに行っても売ってるね」という彼の言葉に、あらためて感じるものがあった。

 これまで抑え込まれていた需要が爆発しているのか、今年に入って日本のビールの販売量は急増し、輸入ビールの販売量トップを奪還した。何もビールだけではない。一部の日本のウイスキーを巡っては「オープンラン(開店前に列に並ぶこと)」まで起きている。今年の初めには『THE FIRST SLAM DUNK』をはじめとする日本のアニメ作品が韓国の劇場街を席巻した。それに便乗した日本文化ブームを懸念する声が強かったのも事実だ。

 こうした現象を主導しているのは当然、若い層だ。若者の日本に対する拒否感が既成世代に比べて薄いのは、幼いころから頻繁に接していたからだろう。上の世代に『SLAM DUNK』『ドラゴンボール』があったように、われわれの年頃の者には『ワンピース』と『鋼の錬金術師』があった。これらの漫画から派生した流行語は、今もなお用いられている。中には、既成世代の目で見ると理解し難いであろう作品もある。日本の説話を借用してもいる忍者武侠(ぶきょう)漫画『NARUTO -ナルト-』が代表的だ。日本少年漫画の全盛期だった2000年代に青少年期を過ごした今の30代だけを取り上げてみても、こうした文化は決して異質なものではない。

 日本文化に対する広い包容力は、経済的・文化的なものと政治的・歴史的なものは分離すべきだという認識につながる。例えば、大正時代の剣士が主人公の漫画『鬼滅の刃(やいば)』に熱狂している韓国の青年の中に、その時代の日本で湧き上がっていた軍国主義を称揚する人はいない。兄妹間の友愛だとか勧善懲悪といった、人類普遍の感情に魅力を感じているだけだ。おかげで『鬼滅の刃』劇場版は、パンデミックという時局の中でも実に215万人を動員した。

 日本だけがそうなのではない。中国由来の麻辣湯や糖葫蘆は、韓国の10代、20代の強い反中感情にもかかわらず、彼らの間で高い人気を集めている。20代に最も人気のあるゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』の運営会社も中国企業のテンセントだ。このように、韓国の青年らが日本漫画を好み、中国ゲームを楽しんでいるとしても、日本の右翼の妄言や中国の東北工程に対して憤怒していることに異論の余地はない。実際、友人C氏の日本に対する姿勢も両価的だ。彼は日本のコンテンツを好んでいるが、福島汚染水放流問題については「韓国政府がもっと強く声を上げるべきだった」と批判している。李明博(イ・ミョンバク)元大統領の独島訪問も高く評価している。

 不買運動が個人の愛国心を表現する手段の一つであることには同意する。しかし、あらゆる文化や商品の消費を愛国心と結び付けてはならないと思う。政治的な目的による強要はなお一層警戒すべきだろう。経済にせよ文化にせよ、交流する隣国の全てを排斥することはできない。「二度と負けない」と称し、これを務めて無視することで親日派をえぐり出そうと言いながら、自分たちは北海道旅行の計画を立ててレクサスに乗るという矛盾が生じる。

 愛国を装った政治的な組分けは、他の何よりも反日の押し付けに嫌気を感じさせる。案の定、韓国の一部の国会議員は、杭州アジア大会(2022/杭州。2023年開催)のサッカー決勝の後「来年の総選挙も韓日戦」だとエンジンをかけ始めた。よほどその話をしたかったのか、台湾との野球の決勝を韓日戦と勘違いした議員もいた。ドイツの政治学者カール・シュミットは、敵と友人を区分するのが政治だと述べた。断言するが、日本のビールをちょっと飲んだから、日本製のシャンプーをちょっと使ったからといって親日派と決め付けてしまう政治であれば、後に残る友人はいないだろう。

イ・ドンス青年政治CREW代表

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