▲写真=UTOIMAGE

 パレスチナのイスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃から始まった今回の戦争は5日目に入ったが、主要国の多くは傍観する態度を示している。ロシアによるウクライナ侵攻で世界は一気に両陣営に分かれ結束したが、今回はこれとは非常に対照的だ。複雑な中東情勢と自国の利害を考えた上での行動とみられる。

 大統領選挙を1年後に控えた時期に新たな課題に直面した米国のバイデン政権は同盟国であるイスラエルを支援はするが、直接の介入は避けようとしている。ウォールストリート・ジャーナルは「米国はイランを巻き込んだこの地域の紛争に巻き込まれるのを避けながら、イスラエルを引き続き力強く支援できるかが問題」と指摘した。

 同盟国を支援する方針は明確にするが、必要以上の刺激は避けたいとする米国のジレンマはバイデン政権の動きからも見て取れる。小規模な特殊部隊を派遣し、2隻の原子力空母を同時にイスラエル近海に配備する方向で検討はしているが、ハマスの背後にあるイランを直接名指しはしていない。ホワイトハウス国家安全保障会議のカービー戦略広報調整官は10日(現地時間)、MSNBとのインタビューで「イランは長い間ハマスやこの地域のテロ組織を支援してきたが、今回の攻撃に直接介入した具体的な証拠は確保していない」と述べた。カービー氏は前日「イスラエルに米軍の地上部隊を派遣する計画はない」とも明言している。

 このような米国の動きは今のバイデン政権の方針の延長線上にあるようだ。バイデン政権は中国への対応に力を入れるため、それ以外の地域では極力消耗を避けたいと考えている。

 バイデン政権は「屈辱的」との非難を受けながらも就任1年目にアフガニスタンから米軍を撤退させ、一環翌年からはロシアに侵攻されているウクライナに武器や資金の支援を行ってきたが、派兵には最後まで応じなかった。最近は中東の反イラン連帯構想の一環としてイスラエルとサウジアラビアの関係正常化に向けた仲裁に力を入れている。

 米連邦議会下院議長が現在空席という複雑な国内事情も迅速かつ果敢な支援の障害となっている。ただし民主党と共和党のいずれもイスラエルへの早期支援では一致しているため、臨時の下院議長体制で例外的に支援法案を成立させる可能性も浮上している。マッキンリー下院議長代行はこの日「政府として行動すべきなら行動する」と発言した。

 今回の事態で米国の国力が分散され、経済面と安全保障面で米国などからさまざまな分野で圧力を受けている中国がやや息を吹き返すとの見方もある。来月サンフランシスコで予定されているアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議でバイデン大統領と中国の習近平・国家主席の首脳会談が予定されているが、これについて中華圏メディアは11日「今回イスラエルとハマスの戦争は重要な議題になるだろう」と一斉に報じた。シンガポール聯合早報は「両国が合意を見いだせる議題はほぼないが、イスラエルとパレスチナの休戦については意見が一致する可能性がある」と予想した。

 しかし中国にとっては「危機と同時にチャンス」という見方もある。どちらかに肩入れして敵を作れば、中東で構築してきた「仲裁者」の地位を失ってしまうからだ。今年3月に中国はサウジアラビアとイランの国交回復を仲裁し、6月にはパレスチナのアッバス議長、9月にはシリアのアサド大統領を北京に招いた。サウジアラビア、エジプト、イランなどは今年8月、中国が進めるBRICS体制に新たに加わり、中国にとって潜在的な友好国となりつつある。このように地道に築き上げてきた中東での仲裁者の地位を維持するには、中国は当分どちらの側にもつかないあいまいな態度を維持する可能性が高い。そのため中国は今回の武力衝突ですでに完全に死文化したと考えられている1993年のオスロ合意における解決策(イスラエルとパレスチナが平和的に共存するというビジョン)に従うよう繰り返し主張している。

 中国政府のテキ・セン中東問題特使は10日、エジプト外務省のパレスチナ事務担当次官補と電話で協議し、直ちに休戦するよう求めはしたが、特定の国に対する批判は自制した。一方で中国海軍は今月9日、広州でサウジアラビア海軍と合同の海上訓練「藍剣2023」を開始した。中国はこの訓練を定例化し、中東地域における影響力をさらに高めたい考えだ。

 日本は数々の懸案で米国や西側陣営と固く歩調を合わせてきたが、今回のイスラエルとハマスの戦争では双方に自制を求めるなど、バランス維持に力を入れている。ロシアによるウクライナ侵攻の際には米国と共にロシア制裁に加わり、ロシアとの関係をほぼ破綻させたのとは違った対応だ。

 日本の岸田文雄首相はイスラエルのネタニヤフ首相、パレスチナのアッバス議長双方と電話会談を行う方向で調整しているという。朝日新聞が報じた。ヨルダン川西岸地区にのみ自治権を持つパレスチナ自治政府は今回の衝突で当事者ではない。表向きは仲裁に乗り出しつつも、実際は中東諸国に「日本はこの問題ではどちらの側にもつかない」という中立的な態度を暗に示そうとしているようだ。

 岸田首相は8日にSNS(交流サイト)を通じ、ハマスによる民間人虐殺について「罪のない一般市民に多くの被害が出たことを強く非難する」としながらも「ガザ地区でも複数の死傷者が出ている点を深刻に懸念しており、全ての当事者が最大限自制することを願う」との考えを示した。とりわけハマスに対して「テロ組織」ではなく「パレスチナ武装勢力」と表現するなど対応に苦慮する様子もうかがえた。

 このように慎重に慎重を期する日本の動きの背景には、原油の90%以上を中東に依存するという現実がある。日本は1990年の湾岸戦争の時も人材を派遣せず総額130億ドル(現在のレートで約1兆9400億円)の資金援助しか行わないなど、中東問題には非常に消極的な態度を示している。米国との同盟を維持する一方で、エネルギー安全保障の重要なパートナーである中東諸国との友好関係も同時に維持したい実利重視の外交を続けているのだ。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)特派員、ワシントン=金真明(キム・ジンミョン)特派員、イ・ボルチャン記者

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