▲ソウル市広津区紫陽洞のシニアタウン「ザ・クラシック500」/オ・ジョンチャン記者

 ソウル市江南区紫谷洞にあるシニアタウン(老人福祉住宅)のザ・シグナムハウス(230世帯)だ。満60歳以上のための健康管理施設やフィットネスセンター、レジャー文化施設などのコミュニティー施設を備え、ホテルさながらの食事も提供される同施設に入居するためには、今申し込んでも4年は待たなければならない。入居待機時間がこのように長いのは経済力を備え、外部活動も活発な「アクティブ・シニア」が増え、シニアタウンに対する需要が急増する一方で、供給が絶対的に不足しているためだ。昨年基準で韓国国内のシニアタウンの数は全国に39カ所、8840世帯に過ぎない。すでに超高齢社会に突入している隣国日本には、韓国のシニアタウンに相当する有料の老人ホームが現在1万6724カ所も存在し、入居者が63万4395人であるのと比べると、0.2%にも満たない水準だ。日本には65歳以上の高齢層(約3600万人)が韓国(927万人)よりも多いことを考慮しても、大幅に不足している。このように供給が絶対的に足りないため、3月に賃貸分譲したソウル市江西区麻谷地区のシニアタウン「VLルウェスト」は、広さによっては最高で205対1となり、平均19対1の高い競争率をマークした。

 シニアタウンを取り巻く状況は、全世界で高齢化の速度が最も速いとされる韓国が、これに対してどれほど準備ができていないかを物語っている。2025年、韓国で65歳以上の人口は初めて1000万人を突破し、超高齢社会(高齢人口が占める割合が20%以上)に突入すると予想される。高齢社会から超高齢社会への到達にかかった期間が英国は50年、米国は15年、日本は10年だが、韓国はわずか7年に過ぎなかった。高齢人口は急増しているものの、いざ彼らの間では「子どもに負担を与えず、自由に余暇を楽しみながら老後を過ごそうとしても、適当な場所が見当たらない」といった声があふれている。専門家たちは「これまで、政府の政策が寝たきりの老人に集中していたため、民間レベルのシニアタウンに対する関心そのものがほぼゼロに等しかった」と指摘する。

■日本は1万6000カ所、韓国は39カ所にとどまる

 今後入居が予定されているシニアタウンも指折り数えられる水準にとどまっている。首都圏の場合、今年末に入居予定の仁川市西区青羅洞の「ザ・シグナムハウス青羅」(139世帯)、2025年下半期の入居を目標としている京畿道儀旺市儀旺白雲バレーの「白雲湖プルジオ森の朝のスイート」(536世帯)とソウル市江西区麻谷地区の「VLルウェスト」(810世帯)の3カ所を合わせても、わずか1500世帯に過ぎない。

 このようにシニアタウンの供給が不足している最も大きな理由として「分譲」を禁じた政府規制が挙げられる。もともとシニアタウンは分譲と賃貸の両方が可能だった。2010年代に入って京畿道竜仁市の「スプリング・カウンティー・ザイ」など、分譲型シニアタウンが集中的に供給された。しかし、政府が2015年に無分別な転売を禁止するとして賃貸だけを許可したことで、供給が途絶えた。需要と供給の両方で賃貸よりも分譲の方が求められているためだ。これといった所得のない高齢者にとって、賃貸型はコスト負担が大きい。供給者の立場からも賃貸は投資コストを回収するのに時間がかかり、生活費を高く策定しなければ収益を出すことができない構造となっている。韓国不動産開発協会のイ・ジン室長は「分譲を許可したとして転売条件の強化など投機防止のための政策を構築すれば、中産層の老年人口もシニアタウンへの入居が可能になるだろう」と力説する。

■高い参入障壁に加え、政策もおぼつかず

 今年、韓国政府の高齢社会向け予算は約27兆ウォン(約3兆円)に上る。それでも高齢人口の住居満足度が高くないのは、さまざまな形態の住居の供給を防ぐ規制のためだ。現在、老人福祉法は、事業者が土地と建物を直接所有していなければ、シニアタウンを運営できないように定めている。全国老人住居福祉施設協会のイ・ジヒ事務局長は「シニアタウンを運営する組織を備えた大企業や大手総合病院でなければ、新規参入するのは至難の業」と肩を落とす。

 シニアタウン活性化のための政策もおぼつかない。日本の場合、中間層向けのシニアタウンである「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」制度を2011年に導入し、補助金と税制の優遇処置を取っている。融資も事業費の100%までを可能としている。これに比べ、韓国は取得税と財産税を25%減免しているに過ぎない。これについて、建国大学のユ・ソンジョン教授は「特に中産層のための老人住居は死角地帯に置かれている」とし「税制やローンの際の優遇措置を拡大し、民間中心に供給を増やすべきだ」と促した。

シン・スジ記者

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