▲写真=UTOIMAGE

 米国は1945年に南部ニューメキシコ州の核実験場で原子爆弾実験「トリニティ実験」を行った。世界で最初の核実験で、その影響に関する当時の記録はこれまで過小評価されてきたとの研究結果が先日公表された。当時の核実験は米本土はもちろん周辺国にまで影響を及ぼしていた。

 米プリンストン大学の研究チームは今月20日、論文の事前公開サイト「アーカイブ」を通じ「トリニティ実験による放射性降下物は10日後に米本土46州、メキシコ、カナダにまで広がった」とする研究結果を公表した。

 この研究結果から、核実験による放射性降下物は従来の予測範囲をはるかに超えて広がるとの見解が示された。研究チームは当初、実験当時の気象に関するデータが確保できず詳しい分析ができなかったが、先日欧州中期気象予測センターが公表した気候パターンに関する資料を確保したことで一連の結果を確認した。

 米プリンストン大学の科学・世界安全保障プログラム研究員で報告書作成の中心メンバーだったセバスチャン・フィリップ氏は「この研究は大きな発見だが、誰も驚かないはずだ」とコメントした。

 プリンストン大学の研究チームは最先端のモデリングソフトウエアと最近発見された過去の気象データを使い、トリニティ実験当時の放射性降下物の拡散について分析した。その結果、実験が行われたニューメキシコ州では放射線量の87%がトリニティ実験で発生しており、実験が行われたソコロは米国で5番目に高い放射線量を記録したことが分かった。

 トリニティ実験と共にネバダ州で行われた93回の核実験で発生した放射性降下物も改めて分析し、米国全土の放射性降下物を示す地図も作成された。この地図によると、ニューメキシコ州から始まった放射能性降下物は北部に広がり、続いて東部と南部にも影響を及ぼした。ニューメキシコ州北西部のワシントン州とオレゴン州を除く米国全土が核実験の影響を受けた。

 この研究を受け、これまでトリニティ実験による放射線被ばくに対する連邦補償が受けられなかったニューメキシコ州周辺住民への適切な補償を求める声も出ている。米国は1990年「放射線被ばく補償法(RECA)」を制定し、放射線被爆者に補償を行ってきた。しかしニューメキシコ州ではこれといった補償は行われていない。RECAによると補償は2024年までと定められている。

 核実験被害者の補償再検討を求める「トゥラロサ盆地風下住民共同体(TBDC」によると、当時核実験場周辺150マイル(約240キロ)以内には50万人が住んでいた。しかし核実験に関する情報は事前に伝えられず、住民は避難もできなかったという。

 TBDCを設立したティナ・コルドバ氏は「トリニティ実験に関する新たな情報は記念碑的な新しい情報だ」「当時の核実験被害者の証言が確実であることを示す根拠として活用されるだろう」とコメントした。

イ・ビョンチョル記者

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