コラム
「福島取材」を断った理由【朝鮮日報コラム】
東京電力は今月21日、韓国など海外メディアに福島第一原発の汚染水(日本は処理水と表記)を初めて公開した。全世界のメディアから申請を受けた東京電力は、最終的に海外メディア15社だけに海洋放出施設を公開し、取材を制限した。本紙は、複数の韓国メディアと共に現場取材を許可された。しかし、申請した韓国新聞・放送各社のほとんどが許可を受けた中で、ハンギョレ新聞とMBCだけが除外された。これまで汚染水の海洋放出に否定的な報道をしてきたためと考えられる。意図的に排除した状況を確認した本紙は、福島取材の前日、今回の取材を主管した公益財団法人フォーリン・プレスセンター(FPCJ)に、取材を断る旨を丁重に伝えた。
東京電力としては、韓国メディアの一部が汚染水の危険性について悪意をもって過剰包装し、ごまかしていると判断したのかもしれない。韓国で福島の汚染水に対する非科学的な怪談(デマ)が盛んなのも事実だ。「汚染水は放射性物質にまみれた水で、3カ月で韓半島(朝鮮半島)周辺の海が放射能に覆われる」という怪談だ。その上、国際原子力機関(IAEA)が「多核種除去装置(ALPS)を通した処理水の海洋放出は国際基準上、適正だ」という最終結論を下すや、「日本政府はIAEAを買収した」という陰謀論まで飛び出した。これらは政治的目的の宣伝・扇動だと思う。本紙は約10年前に狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)に関するデマがあった時も科学の側に立ったように、今も同じ姿勢を貫いている。福島原発汚染水海洋放出施設の取材を申請した理由も、現場をありのままに読者に伝えようとしたからだった。
それでも、取材を放棄した理由は明確だ。日本政府と東京電力が「科学に基づいて透明性をもって処理水の情報を公開する」という従来の方針に反する行動を取ったためだ。日本政府と東京電力にも、どの報道機関に取材を許可するかを決める権利はあるし、嫌な報道機関を避けることもできる。だが、自分の口に合う報道機関を選別する行為は、自らが主張してきた「透明性をもった公開」ではない。透明性をもった公開ならば、汚染水の安全性を疑う報道機関にも公開しなければならない。
日本は近いうちに年間22テラベクレル(TBq)のトリチウム(三重水素)を含む汚染水を海洋放出する。科学的には海洋放出に問題がないとしても、情緒的には周辺国の国民の不安を高め、人々に迷惑をかけているのは厳然たる事実だ。福島原発事故は悲劇だが、十分な津波対策なしに原発を建設した日本政府の責任もなくはない。日本の岸田文雄首相が何度も「周辺国や国際社会に福島原発処理水の海洋放出計画を丁寧に説明する」と強調したのは、こうした人々への迷惑を念頭に置いてのことではないのか。見せたい人にだけ、見せたい情報だけを見せる行動は、岸田首相が言ってきた「丁寧な説明」ではないと思う。そのような取材は価値がない。
成好哲(ソン・ホチョル)東京支局長