▲写真=NEWSIS

 在韓米軍は2019年2月、高高度防衛ミサイル(THAAD)の正式配備に必要な一般環境影響評価の事業計画書を提出した。すると翌日に当時の文在寅(ムン・ジェイン)政権が外交ルートを通じ、中国政府にこれと関連する内容を説明していたことが20日までに分かった。

 本紙が入手した文在寅政権当時の韓国国防部(省に相当、以下同じ)文書には「(2019年2月22日に)外交部が一般環境影響評価関連で対中説明」と記載されている。在韓米軍が韓国国防部に「星州THAAD基地環境影響評価事業計画書」を提出した翌日のことだ。文在寅政権は発足直後の2017年7月、通常1年かかる一般環境影響評価を実施し、その上でTHAADを正式配備すると発表した。事業計画書の提出はその最初の段階となる。

 当時の一連の内容はメディアでも報じられ、中国も計画書提出の事実は把握していたようだ。ただし誰の要求で説明が行われ、いかなる情報が伝えられたかは分からない。また計画書提出の翌日に早くも中国への説明が行われたことから「文在寅政権がいかに中国の顔色をうかがっていたか分かる」との指摘もあった。ある韓国政府筋は「当時の外交部は米国の了解も得ないまま中国に説明した」と伝えている。

 与党などからはこれまで「文在寅政権は2017年10月、THAADについて中国と『3不1限』を約束した」などの主張が相次いでいた。3不とは「THAAD追加配備不可」「米国のミサイル防衛(MD)システム参加不可」「韓米日軍事同盟不可」を意味するもので、1限は「THAADで中国を狙わない」という意味だ。文在寅政権の複数の関係者は「3不は両国の合意ではないし、1限を中国が要求した事実もない」と反論しているが、20日に公開された当時の国防部文書には3不について「韓中間の従来の約束」、3不1限については「両国が合意した」などの記載があることから改めて問題になっている。

 「環境影響評価が遅延し過ぎ」との批判に対し文在寅政権は「住民の反対」「政治的・民主的な正当性の確保」などを言い訳としたが、実際は中国との対立を避けるためだったのだ。

 2021年5月に国防部が作成した文書「BH(青瓦台=韓国大統領府)主管会議およびNSC(国家安全保障会議)の結果」によると、出席者から「環境影響評価を行う際、住民や反対する団体の抗議行動が激しくなってTHAAD問題が再び浮上し、これにより中国との対立が広がることが懸念されるため、状況の管理が必要」との意見が出ていた。米軍が事業計画書を提出し、手続きが始まってから2年3カ月が過ぎた時点でのことだった。環境影響評価法により韓国政府は住民や専門家が参加する評価協議会を立ち上げねばならなかったが、文在寅政権は任期が終わる2022年5月まで協議会を発足させなかった。

盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者、キム・スンジェ記者

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