6月11日、ソウル市瑞草区のあるホテルで開かれた「小児青少年科脱出のための学術大会」に小児青少年科専門医など約800人が参加し、満席となった。/イ・テギョン記者

 6月11日、ソウル市瑞草区のあるホテルの2階会場に入ると、「小児青少年科脱出(No kids zone/ノー・キッズ・ゾーン)のための第1回学術大会」という横断幕が掲げられていた。最近廃業寸前に追い込まれている小児青少年科の医師を対象に成人慢性疾患、美容、ペイン・クリニックなどの開業ノウハウについて講義する場だった。受講料は、大韓小児青少年科医師会の会員は6万ウォン(約6500円)、非会員は30万ウォン(約3万2000円)だ。小児青少年科専門医など719人が事前登録し、現場で登録した医師まで含めると、約800席が埋め尽くされた。

 学術大会だったが、入試説明会のような雰囲気だった。最初の講演のタイトルは「成人診療の基本中の基本、専門家が丁寧に講義する高コレステロール血症のポイント整理」だった。講師を務めた内科医は「この場に出席した小児科の医師たちが明日からすぐ診療現場で活用できるように説明する」と内科診療マニュアルについて述べた。小児科医たちは、まるで受験生にでもなったかのように、ノートにメモしながら講義に耳を傾けた。講義中の質問はメッセンジャーを利用してリアルタイムで行われた。ある小児科医に「特に聞きたい講義はあるか」を尋ねると「今はあれこれえり分けるときではない」とし「美容やペイン・クリニック、成人疾患など、吸収できることは全て学んでいくつもり」と笑みを浮かべた。

 その後の講義のタイトルは「診療室ですぐ応用できるボトックスのポイント」「肺機能を検査する機械を活用した成人ぜんそくの診断と治療の実態」「糖尿の診断と管理」「細かい小児科専門医が上手に活用する下肢静脈瘤(りゅう)の診断と治療の実態」「肥満治療の実戦適用」などだった。内科、皮膚科、家庭医学科、胸部外科などが主に診療する疾患に関する内容だ。同日の講義は現在、小児青少年科の医師たちが変えたい診療科目を中心に構成された。大韓小児青少年科医師会のイム・ヒョンテク会長は「今日は総論中心に講義を準備したが、今後は小児科医が適性に合った分野を探せるよう分野別の講義も準備する方向性で検討中」と話した。

 小児青少年科は健康保険医療報酬が他の診療科目に比べて低く、非給与診療は多くない。同じ人数の患者を診察しても、他の科に比べて収入が低いとする不満の声が絶えない。保健福祉部(日本の省庁に当たる)によると、2020年の医師の平均年俸は2億3000万ウォン(約2500万円)だが、小児青少年科医は1億875万ウォン(約1200万円)と、全体の臨床科医の中で最も低く、平均の半額にも満たなかった。これまで小児青少年科の医師たちは「薄利多売」型の診療で病院を運営してきたが、低い出生率により乳幼児が減り、経営難を訴えるケースが増えている。2017-21年の5年間に全国で廃業した小児科医は実に662カ所に上る。京畿道で病院を経営する小児科医は「10年前に初めて開院した時と比べると、患者数が10分の1に減った」と厳しい現状に触れた。

 また、悪意のある苦情も小児科を遠ざける原因だ。ある小児科専門医は「地域のママカフェなどに掲載された書き込み一つが病院を滅ぼす」とし「ママカフェを武器に抗議する保護者たちに会うと、診療意欲を大幅に喪失する」と肩を落とす。意思疎通が困難な小児を診療しているため、訴訟などに巻き込まれるケースも少なくないという。小児青少年科専攻医の志願率は2020年の74%から21年に38%、22年に27.5%、23年には16.6%へと急減した。「ビッグ5」と呼ばれるソウル大学病院、ソウル峨山病院、サムスンソウル病院、カトリック中央医療院、セブランス病院のうち、ソウル峨山病院を除く全ての病院が定員を割り込んだ。

 しかし、小児科がなくなったことで、ソウルでも両親は3-4時間待って子どもの診療を受けるというのが現実だ。郡単位では小児科の診察を受けるために、車で数時間も離れた中小都市まで駆け付けなければならない。保健福祉部は小児診療の報酬などを引き上げ、上級総合病院に小児救急専門医を24時間配置するなどの対策を発表した。しかし、「小児科脱出」を防ぐには力不足といった見方が多い。

チェ・ウォングク記者

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