話題の一冊
唯一神概念になじみが薄い日本人のためのキリスト教入門書
【新刊】橋爪大三郎・大澤真幸著、コ・フンソク訳『ふしぎなキリスト教』(ブック&ワールド刊)
「キリスト教に対する理解度が世界で最も低い」日本の読者を対象にしたキリスト教入門書だ。日本人にとって神は友人のようなもので、多ければ多いほどいい存在。だから唯一神概念はなじみが薄く、「ふしぎ」だという。比較宗教社会学者と理論社会学者の著者たちが対談を通してキリスト教を「理解」の対象として分析し、説明する。
取り上げるテーマは基礎的だが、核心を突いていて深奥だ。著者たちは「全知全能の神が作った世界になぜ悪が存在するのか」「なぜ福音書は多数あるのか」「聖書には登場しない三位一体の教理はなぜ生まれたのか」「『人の子』とはどういう意味か」「キリスト教はいかにして『西洋』を作ったのか」などの問答をやりとりして教理と歴史を説明する。
著者たちが対談を企画したのは、日本の近代化は思想的には基礎工事のない建物、という反省があるからだ。西欧の近代はキリスト教が土台なのに、日本は基礎についての理解なく建物だけを移植してそのまま来ているのだから、今からでも学ぶべきだという。キリスト教への関心や気になるところがある韓国の読者にも有用な一冊。372ページ、1万8000ウォン(約1830円)
金翰秀(キム・ハンス)宗教専門記者