社説
合計特殊出生率がほぼ倍の日本でさえもがいているのに…韓国は無駄な時間ばかり【6月15日付社説】
日本の岸田文雄首相は13日「未婚率上昇と出生率低下の大きな要因は若い世代の所得問題」と指摘し、育児や出産などの費用を政府が支援することなどを定めた少子化対策を発表した。児童手当の額を0-3歳の乳幼児には1人当たり月1万5000円、その後は高校生まで月1万円とし、3番目以降の子供には月3万円とするのがその骨子だ。これまで中学生までだった児童手当の対象を高校生までとし、親の所得制限も撤廃した。
日本における昨年の合計特殊出生率は1.26で、韓国の0.78よりもはるかに高い。それでも「若者たちが未来に希望を持ち、結婚して子供を生むことができる社会を作らない限り、少子化の流れを食い止めるのは難しい」として果敢な政策を発表したのだ。これは日本よりも韓国の方から先に出てくるべき言葉だ。
韓国は経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国の中で合計特殊出生率が1人に満たない唯一の国だ。2018年に0.98人を記録し1人を下回って以来、上昇どころかさらに下落する流れが今も続いている。少子化は高齢化と重なることで国を支えられなくなる状況へと追い込む。若者1人が高齢者2人を養う社会など維持できるだろうか。国が崩壊する絶体絶命の危機に直面しているにもかかわらず、韓国ではこれといった対策もなく無駄な時間ばかりを過ごしている。それでも目につく対策は今年から乳児手当を引き上げ、満0歳は月70万ウォン(約7万7000円)、満1歳は月35万ウォン(約3万9000円)とし、その後8歳未満までの児童手当を10万ウォン(約1万1000円)にするくらいだった。しかしこの程度の対策では世界最悪の少子化の流れを食い止めることはできないだろう。
何よりも20代と30代が出産や育児にかかる経済的・社会的負担の軽減を感じられる画期的な対策が切実に求められている。フランスの場合、子供の数に比例して所得税率を下げる「N分N乗」方式が採用されている。これはフランスがOECD加盟国でトップに近い出生率(1.8人)を維持する秘訣(ひけつ)とされている。韓国もこのようなさまざまな制度を積極的に研究しなければならない。
地方教育交付金をはじめ放漫な使途が問題とされる税金は毎年数十兆ウォン(数兆円)に上る。大統領の公約で手続きが進められている兵士の給与引き上げだけで年間5兆1000億ウォン(約5600億円)、これに副士官や将校の給与に必要な予算も合わせると10兆ウォン(約1兆1000億円)以上が今後必要になる。人口そのものが減り若者が減少するのは教育や安全保障以上に深刻な問題だ。
出産祝い金や児童手当の大幅な引き上げ、出産時の税の減免など、特段の対策が今必要になっている。初等学校(小学校)児童を医学部に入らせるための塾といった常識外れの私教育競争、就職難、住宅難、保育所不足など社会の基礎的な環境も画期的に改善する必要があるだろう。こんな国でも少子化問題で市民の記憶に残っているのは担当副委員長が政治的な理由で辞任したことくらいだ。このままでは駄目だ。