▲今年4月、J-POP歌手のimaseがソウル市麻浦区弘大の公演場で歌っている様子。/写真=ユニバーサル・ミュージック

 5月30日、ソウル市鍾路の清渓川前にある清渓広場には、J-POP歌手imaseの代表曲「NIGHT DANCER」が流れていた。韓国の若いジャズアンサンブルの演奏だった。周囲を歩いていた市民数十人が、なじみのメロディーに足を止めてステージに見入っていた。ジャズ公演に続いて、ある私立大学のダンスサークルが、日本語の歌詞が流れる歌に合わせてステージを飾った。

 ほんの1-2年前、韓国はJ-POPにとって近付き難い凍り付いた地だった。地上波テレビやラジオでは、日本の音楽を流すことが事実上タブー視されていた。防弾少年団が最高の人気を謳歌していた2021年、日本の有名ロックバンドback numberと一緒に発表した新曲は、韓国国内では全く注目されなかった。

 このように、韓国人にとってJ-POPとは、90年代にX-JAPANなどビジュアル系ロックバンドの海賊版CDで形成された少数マニア層の専有物としか考えられていなかった。人々は、日本文化を楽しむ人間を「オタク」と呼び、無頓着な体つきや髪型など否定的なイメージをかぶせた。

 アイドルを筆頭とする「Kカルチャー」が日本など世界で成功を収めているのとは対照的な出来事だ。日本最大の週刊誌「週刊文春」は2021年、「“J-POPが消えてしまった国”韓国」というコラムで「K-POPの急激な成長と反比例して、韓国から日本音楽がほとんど消えた状態」と指摘した。

 今年は、韓日関係にとって大きな意味のある年だ。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と岸田文雄首相は、相手国を行き来するシャトル外交を12年ぶりに再開した。2人は5月に広島の韓国人原爆犠牲者慰霊碑をそろって訪れた。

 韓日関係は過去数年間、反日感情をあおる韓国政界の工作と積極的な解決に乗り出さない日本政界によって、光の見えない状態にあった。そんな中でも唯一、両国間のコミュニケーションの道を開いてくれたのが、Kカルチャーに対する日本のZ世代(90年代中盤-2000年代生まれの世代)の関心だった。

 韓国が「ノー・ジャパン」運動で騒がしかった2019年にも、日本も主な都市部には防弾少年団などK-POPの歌が流れていた。日本のZ世代はコロナ・パンデミックの期間中、「渡韓ごっこ」を楽しみながら韓国旅行を夢見た。強制徴用被害者賠償解決策の提示など関係改善に乗り出した尹大統領の努力に岸田首相が応えたのも、韓国に対する日本の若者層の関心が大きく働いたのだろう。

 数日前、imaseの音楽がソウルを代表するランドマークたる清渓川に流れたように、韓国市場で辺境に追いやられていたJ-POPの立場が、遅まきながら高まりつつある。わずか2年前、韓国がJカルチャーを受け入れないと指摘した「週刊文春」は、5月29日に「日本に対する韓国Z世代の本音が徐々に水面上へと現れてきている。これが本当のエンターテインメントの力」と伝えた。

 過去にとらわれない世代、両国のZ世代が韓日関係の希望だと思う。K-POPとJ-POPは、そういう前向きの力を発揮できるだろう。

キム・ドンヒョン記者

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