共に民主党は「中国が台湾に侵攻しても、韓国は中立を守らなければならない」と強く主張する。もっともらしく聞こえるが不可能なことだ。韓国の意思とは関係なく、中国が韓国を台湾戦争に引き込むからだ。

 世界の主要地域で数年以内に戦争が起きるとすれば台湾と言われている。中国による台湾侵攻の可能性は低いが、中国共産党による一党体制の特性からみて、決して無視できない問題だ。米中による軍備競争は事実上全て台湾戦争を想定したものだ。中国の誤った判断で戦争が起きれば、負ける側は世界の覇権を失う歴史的敗北にならざるを得ない。米国がそれにどれほど敏感に対応しているかは、米国民が愛する海兵隊を海兵隊ではない別の存在に換骨奪胎させていることからも見て取れる。

 中国が台湾に侵攻しても、米軍は核戦争の危険性があるため、中国本土を攻撃できないという分析が支配的だ。ましてや中国本土で上陸作戦を行うことは想像できない。既に米海兵隊はノルマンディーや仁川のような大規模上陸作戦を放棄した。戦車などの上陸戦力を大幅に縮小しており、なくしてしまうかもしれない。米海兵隊は今や台湾付近の小さな島々を素早く移動し、移動式ミサイルで中国軍の艦船を攻撃する部隊へと性格を変えている。中国も驚くべきペースで海軍力と空軍力を高めている。韓国海軍の規模に匹敵する艦隊を1-2年ごとに発足させている。

 米戦略国際問題研究所(CSIS)のウォーゲーム(戦争シミュレーション)によると、中国軍が台湾上陸を試みた場合、最も効果的な反撃手段は米軍の長距離爆撃機から発射する長距離対艦ミサイルであることが分かった。それが戦争の勝敗を決める要素となった。米国が未完成のB21次世代長距離ステルス爆撃機を急いで世界に公開したのは、中国に警告を送る狙いがあった。

 数年後にB21爆撃機が配備される米第8空軍は強大だが、現在保有する爆撃機の数は意外と少ない。主力のB2ステルス爆撃機は20機にすぎない。中国が台湾を攻撃するならば、米国の長距離爆撃機と長距離対艦ミサイルが拡充される前でなければならず、米国はそれ以前に爆撃機とミサイルを増強する必要がある。その分岐点は2027-28年と予想されている。

 その時点で中国共産党がどんな決断を下すかは習近平自身も分からないだろう。しかし、もし中国が国家の命運を懸け、台湾に侵攻するギャンブルを敢行すれば、台湾と同時に中国のミサイルが落ちる国が二つある。韓国と日本だ。両国には米空軍基地がある。中国にとっては、韓日の基地から出撃した米戦闘機が台湾に上陸する中国海軍を攻撃することを最も恐れている。

 米CSISによるウォーゲームで、中国は日本国内の米軍基地を直ちに攻撃した。しかし、韓国に関してはさらに大きな構想がある。中国は台湾侵攻と同時に韓半島に第2戦線を形成し、米太平洋軍を韓半島と台湾に二分させることが必須だ。これはやるかやらないかの選択ではない。第2次世界大戦でドイツが敗れたのは、東西両戦線で敵を相手にしなければならなかったからだ。米軍にとっても両面戦線は厳しい。さらに、中国には韓半島で第2戦線を代わりにつくってくれる北朝鮮の存在がある。北朝鮮がその役割を担う可能性は十分にある。それは韓国の対中政策によって変わる問題ではなく、中国の軍事作戦上の必要によるものだ。「まさか」という領域ではない。最近公開された米国の機密文書によれば、中国の超音速ステルスドローンが韓国の群山・烏山の米空軍基地上空を通る作戦図があった。台湾問題と結び付けてみれば、その理由が簡単に理解できる。

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が台湾問題について、「力による現状変更反対」の立場を表明すると、中国が「燃やされて死ぬことになる」と反発した。中国が台湾に侵攻する際、たとえ韓国に親中政権があったとしても、中国は韓半島に第2戦線をつくるための火をつける。韓国が「台湾問題不介入、中立」をいくら叫んでも、それとは関係なく純粋に中国の軍事的必要によって火をつけるのだ。韓米同盟がなくならない限り、中国が韓半島に第2戦線を形成する試みは阻止できない。

 韓国にとっては、韓国に台湾の火の粉が降りかからないようにする最も確実な方法は、中国が台湾を侵攻しないことだ。中国が台湾に侵攻した瞬間、その炎は韓国に燃え移る。「中国は力で現状を変えるな」というのは国際社会の基本原則でもあるが、潜在的被害国である韓国国民にとっても切実な要求だ。

 民主党が尹大統領の言及について、「敏感な台湾問題を不必要に正面から取り上げた」と批判するのは野党としては構わない。しかし、まるで尹大統領の言及自体が間違っているかのように攻撃することは、台湾問題の必然的な本質を見過ごしたものだ。どのみち他人の土地に火をつけようという考えている人がそばにいるにもかかわらず、「気に入られたら火をつけないだろう」と信じるとすれば純真というよりも愚かだ。民主党は北朝鮮の核問題に対してもそんな立場を取ってきた。民主党はその失敗から悟りを得てこそ、国民の信頼が高まるだろう。

楊相勲(ヤン・サンフン)主筆

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