▲今年2月25日に行われた「ろうそく勝利転換行動」/NEWSIS

 韓国の国家情報院と警察庁が国家保安法違反容疑で全国民主労働組合総連盟(民主労総)関係者と事務室を捜索した際、「韓米日軍事同盟(協力)解体」「在韓米軍撤収闘争」など反米デモを扇動する内容の北朝鮮からの指令文数件確保していたことが13日までに分かった。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権退陣デモを扇動する内容の指令文もあった。昨年10月の梨泰院雑踏事故当時、反政府デモに使われた「国民が死んでいく」「退陣が追悼だ」などのスローガンが北朝鮮の指令文に具体的に書かれていたという。

 国家情報院と警察庁は今年1月から2月にかけ、複数の民主労総事務室と系列労組の事務室、関係者の自宅などに対する捜索で確保した押収物を分析し、北朝鮮からの指令文などを発見した。北朝鮮は昨年2月、指令文で「韓米日軍事同盟(協力)解体などのスローガンを掲げ、反米闘争の攻勢をかけること」を指示した。また、「在韓米軍撤収闘争スローガンで全地域的に展開していく」とも指示した。同年5月には「多様な反米闘争を継続していく」という指令を出した。

 北朝鮮は昨年10月の梨泰院雑踏事故以降、「国民が死んでいく」「退陣が追悼だ」「これが国か」など反政府デモのスローガンを直接作成し、国家保安法違反容疑者に送ったという。昨年の貨物連帯ストライキ当時には「全ての統一愛国勢力が連帯し、大衆的怒りを誘発させろ」と指令した。

 スパイ防止当局は、北朝鮮の指令文に書かれた反政府スローガンが実際に国内の一部市民団体の闘争スローガンと横断幕の文言に使われた点に注目している。情報当局関係者は「北朝鮮の指令文にあった反政府扇動文言と韓国国内の団体が掲げた文言が一致するケースが相当数あるだけに、民主労総主導の反政府デモと北朝鮮の指令との関係性を示すと理解している」と話した。スパイ防止当局は北朝鮮が梨泰院雑踏事故に対する追悼ムードを反政府闘争に変えようとする指令を下したとみている。自由民主研究院の柳東烈(ユ・ドンヨル)院長は「北朝鮮は金日成(キム・イルソン)主席の当時から韓国国内の従北・左翼勢力や反政府勢力の闘争を扇動、支援せよという対南革命勢力強化指針を下していた。スパイ派遣を通じ、従北・左翼勢力への支援や各種工作を展開したり、韓国の政治、経済、社会など各分野の混乱をあおったりする方式を使ってきた」と指摘した。

 スパイ防止当局が確保した押収物には国家保安法違反容疑が持たれている民主労総関係者が作成した北朝鮮に対する忠誠誓約文も多数含まれているという。忠誠誓約文は北朝鮮の主体(チュチェ)思想と金正恩(キム・ジョンウン)氏による指導を称える内容だという。誓約は朝鮮労働党創建記念日(10月10日)、金正日(キム・ジョンイル)元総書記の誕生日(2月16日)など北朝鮮が重視する祝日を前後して作成されたという。

 北朝鮮はまた、韓国のスパイ防止当局による捜査を念頭に置き、関連捜査を「公安弾圧」と位置づけ、大衆の怒りを誘発するように指示したという。政府関係者は「事実関係の把握ではなく、捜査自体を『公安弾圧』と決め付け、スパイ容疑事件という本質をぼかす世論戦の手法を使うよう指示した」と話した。北朝鮮は指令文で北朝鮮工作員と接触した人々や工作員が標的とした人物を「統一愛国勢力」と呼んだ。彼らに対する捜査は愛国勢力に対する弾圧だという論理だ。実際今回の事件の容疑者は「労組弾圧」などを前面に掲げ、不当な捜査だと主張しているという。

 現在スパイ防止当局は、容疑者らが活動した地域を中心に「昌原スパイ団」「済州スパイ団」「民主労総現職・元幹部」という3つの事件に分けて捜査を進めている。中心人物に対する取り調べが終わり次第、国家保安法違反の罪で起訴する方針だ。政府筋は「今回は容疑者のiPhone(アイフォーン)やテレグラムに対しても異例の解読を行ったと聞いている」と話した。

キム・ミンソ記者

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