「中国が台湾侵攻を開始した場合、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化するのと同じ状況を避けるため速度戦に乗り出すだろう」との見方を台湾国防相が明らかにした。中国はロシアによるウクライナ侵攻から1年を迎えた24日、ロシアとウクライナに向け休戦と直接交渉の再開を呼びかけた。中国は今回の戦争で表向きは中立の立場を表明しているが、実際は米国との対立もありロシア側に立つ動きを示している。

 台湾メディアの報道によると、台湾の邱国正・国防相は24日に台北で記者団の取材に「ロシアによるウクライナ侵攻は、中国軍に『台湾攻撃を開始した場合は速度戦が必要』という大きな教訓になったはずだ」と述べた。ロシアのプーチン大統領は昨年2月24日にウクライナへの軍事侵攻を命じた際「48時間以内にキーウを陥落できる」と大言壮語したが、実際は1年が過ぎても苦戦が続いているからだ。

 邱国防相は中国本土と台湾の間にある台湾海峡について「中国は素早い攻撃を行う計画だが、これを阻止する役割を果たすだろう」との見方も示した。中国軍が台湾海峡を渡るのに1-2週間はかかると判断しているのだ。

 中国は台湾海峡で連日軍事訓練を行い緊張を高めている。邱国防相は20日に公開された台湾の時事雑誌「天下雑誌(CommonWealth Magazine)」とのインタビューで「戦争準備態勢の必要性」を訴えた。邱国防相は「ウクライナで得たもう一つの教訓は、常に準備された状態が必要ということ」「中国が島国の台湾を封鎖しても、サプライチェーンが稼働していれば台湾は耐え抜くことができる」と述べた。2週間あれば米国など友好国が支援に来るまでの時間を十分に稼げるということだ。邱国防相は「他国の支援に依存するわけではないが、われわれは耐え抜くことができると信じる」とも話した。

 ロシアによるウクライナ侵攻から1年となった24日、中国外交部(省に相当)は「ウクライナ危機の政治的解決」に向けた12項目の「方針説明書」をウェブサイトを通じて公表した。その内容は(1)全ての国の主権尊重、(2)冷戦思考の破棄、(3)敵対行為の中断、(4)平和に向けた対話の再開、(5)人道主義的な危機の解決、(6)民間人と戦争捕虜の保護、(7)原子力発電所の安全確保、(8)戦略的リスクの縮小、(9)穀物輸出の促進、(10)一方的制裁の中断、(11)産業とサプライチェーンの安定維持、(12)衝突終結後の再建促進-となっている。

 ロシアによるウクライナ侵攻は2年目に入ったが、どちらかが譲歩する兆しは全くみえない。米国のバイデン大統領が20日にキーウを国賓訪問し、5億ドル(約680億円)の軍事援助計画を伝えた直後にウクライナのゼレンスキー大統領は国民向けの演説で「ロシアによる侵略を終わらせるために必要なことはわれわれの揺るぎない決意だ」として最後まで戦う意志を明確にした。プーチン大統領はバイデン大統領のキーウ訪問翌日の21日、連邦議会で内政・外交の基本方針を示す年次教書演説を行い、米国と核兵器の削減を約束した「新戦略兵器削減条約(新START)」の履行停止を宣言した。

 戦争を続けるロシアに対する欧米の非難は高まっているが、それでも中国はロシアとの結束を強化している。中国はロシアによるウクライナ侵攻直後から「ロシアの安全保障上の懸念を理解する」としてロシアの軍事行動を後押しした。中国は「中立を守る」と表明しているが、国際社会からの「背後でロシアを支援している」との批判は今も続いている。

北京=キム・ナムヒ特派員

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