▲全国民主労働組合総連盟(民労総)事務所前で捜査当局に抗議する新全大協/新全大協提供

 韓国の情報機関である国家情報院や警察などスパイ当局は全国民主労働組合総連盟(民労総)組織局長の男に対し国家保安法違反容疑で捜査を行っているが、この男は2016年8月に中国で北朝鮮工作員にかばんを手渡し、それから1カ月後にベトナムで工作資金が入った黒いものを受け取ったとみられるという。その後、男は資金の追跡をかわすため南大門など韓国国内にある複数の私設外貨両替所で約1万ドル(約130万円)を換金したようだ。国家情報院は裏付け捜査を行った上で、これらを男らの容疑に加えるか判断したい考えだという。

 国家情報院などによると、男は2016年8月にいわゆる「ボストンバッグ」を持って北京に向かい、現地で8時間にわたりあちこちを移動しながらスパイ当局の追跡から逃れようとしたという。その後、男は北京市内の某所に移動し、北朝鮮の朝鮮労働党傘下の文化交流局に所属するリ・グァンジンらと会った。リ・グァンジンは1990年代から韓国に潜伏し、2021年に摘発された「自主統一忠北同志会」のスパイ団に関係していた。韓国のスパイ当局は男による「かく乱行為」で一時的に見失ったが、その後は北朝鮮工作員らが北朝鮮に戻る際に男のボストンバッグと同じかばんを持っていたことを確認し、男と工作員らが会っていた事実を把握した。スパイ当局は男が工作員らに手渡したボストンバッグの中に韓国に関する情報などが入っていたと推測している。

 それから1カ月後の2016年9月に男はベトナムに向かい、ハノイで北朝鮮工作員のチョン・ジソンと会った。男は息子のオートバイでやって来たチョン・ジソンがそのオートバイから取り出した黒いものを受け取った。それから韓国に戻った男は直ちに南大門など3-4カ所の私設外貨両替所で約1万ドルを換金した。スパイ当局はこの資金について「男が北朝鮮に韓国関連の情報を手渡して受け取った工作資金の可能性が高い」とにらんでいる。

 一方で国家情報院と警察が今月18日に民労総本部事務所や被疑者らの自宅などを一斉家宅捜索する直前、被疑者の1人である元起亜自動車光州工場労働組合幹部が突然行方をくらましたことが分かった。この組合幹部はかつて金属労組副委員長も務めた。組合幹部は家宅捜索の当日工場に出勤したが、国家情報院と警察がやってくる直前に突然姿を消したという。今後組合幹部の身柄をすぐに確保できない場合、スパイ当局は逮捕状を申請することも検討している。

趙儀俊(チョ・ウィジュン)記者

ホーム TOP