▲済州市奉蓋洞の「済州平和憩いの場」に駐車された車両が捜索を受けた。/8日、聯合ニュース

 韓国の情報機関、国家情報院が全国民主労働組合総連盟(民主労総)の中心幹部による北朝鮮工作員との接触を確認した時期は2017年だった。しかし、捜索など本格的な捜査が行われるまでには6年を要した。これについて、スパイ防止当局関係者は18日、「当時、文在寅(ムン・ジェイン)政権の国家情報院上層部が南北関係などを理由に事実上捜査を握りつぶして先送りしたと聞いている」と話した。

 2018年、文在寅政権は南北、米朝首脳会談など北朝鮮関連イベントに没頭していた。板門店での南北首脳会談、シンガポールでの米朝会談、平壌での南北首脳会談などが続いた。労組、市民団体の幹部が東南アジアで北朝鮮の工作員に会った証拠を確保しても、北朝鮮が怒ることを恐れ、国家保安法違反による捜査を本格化できなかったという。「ハノイノーディール」以降の19年には米朝関係だけでなく、南北関係も冷え込んだ。元安全保障当局者は「スパイ容疑の証拠が積み上がっており、捜査の幅を広げるべきだと報告したが、当時上層部は『証拠をもっと集めるべきではないか』『南北関係を見守ってちゃんとやろう』などと言い、決裁をしなかった」と語った。冷え込む南北関係にさらに冷や水を浴びせるわけにはいかないという雰囲気だったという。

 別の元当局者は「捜索などで捜査を拡大しなければならないという報告書を作成すると、幹部が休暇を取って出勤しないこともあった」と話した。国家保安法違反の容疑が明らかにもかかわらず、捜査決裁をしなければ職務怠慢となり、「捜査するな」と直接指示すれば職権乱用になるため、さまざまな言い訳で席を外したのだ。この元当局者は「明らかな上命下服組織では、上層部が事実上捜査展開を阻めば、したくてもできない」と話した。18年から19年にかけ、スパイ防止当局は今回捜索を実施した民主労総現職・元幹部らによる国家保安法違反疑惑以外にも、最近昌原、済州などで浮上したスパイ疑惑事件の証拠を相当数確保していた。捜査を拡大して当然だったが、上層部が事実上阻止していたことになる。その間、国家保安法違反の容疑者らはカンボジアのプノンペンとアンコールワット、ベトナムのハノイなどを行き来しながら北朝鮮工作員と接触したり、指令を受けたりし、反政府・反米デモなどを計画したという。公安当局関係者は「民主労総幹部らが接触した工作員と昌原、済州スパイ疑惑の関係者が会った工作員は全く別人だ」とし、「前政権でスパイ防止当局の捜査が緩むと、東南アジアを拠点にしていた北朝鮮工作員らが容易に韓国内部に手を伸ばすことができた」と指摘した。

 そうした中でも国家情報院などは21年、「清州スパイ組織事件」を捜査し、起訴を通じ、事件が明るみに出た。スパイ防止当局関係者は「当時、国家情報院に原則を最後まで守ろうとする幹部がいた」とし、「そうした人たちが院長など国家情報院の上層部に強く要求し、捜査が行われた」と話した。当時清州スパイ組織事件が明らかになった際、国家情報院の内部掲示板には一部職員が「いよいよ国家情報院がなすべきことをする」という応援の書き込みを行ったという。安全保障当局関係者は「今捜査中のスパイ組織は規模が相当なものになるだろう」とし、「原則通りに捜査する」と強調した。

盧錫祚(ノ・ソクチョ)記者

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