コラム
「20年のお祭り騒ぎ」は終わった…中国の不動産、日本型バブル崩壊の阻止に総力(上)
2022年に入り、米国をはじめとする世界各国はインフレを防ぐために先を争うように利上げに動いているが、中国は状況が正反対だ。2021年12月に銀行貸出金利の指標となる最優遇貸出金利を0.05%引き下げたのに続き、2022年も4月、5月、8月に相次いで追加引き下げを行った。11月25日には金融機関から強制的に徴収する預金の比率を示す「預金準備率」を0.25%引き下げると発表した。市中に5000億元(約9兆6000億円)の資金を供給する効果がある。
世界的な趨勢に反するこうした行動は、1年以上を後退が続く不動産景気の安定が急がれるためだ。これまで不動産企業に対する金融引き締めの先頭に立ってきた中国人民銀行と中国銀行保険管理監督委員会(銀保監会)は昨年11月11日、不動産企業の融資返済期間を1年延長するなど16項目の金融支援策を打ち出した。
■住宅価格、1年2カ月連続で下落
中国の不動産は2021年から急落している。2021年9月、全国主要70都市の住宅価格が下落に転じた後、2022年10月まで1年2カ月連続で下落が続いている。 北京、上海など一部の大都市を除けば、ほとんどの都市が住宅価格の下落から抜け出せずにいる。
新規分譲住宅の販売額も2022年2月の前年同月比19.3%減から5月の31.5%減へと減少幅が拡大している。住宅購入希望者が住宅価格の下落を予想し、購入を見送っているのだ。中国政府が集計して発表する不動産景気指数も2022年10月に94.70まで下落した。同指数は基準値の100を上回ると好景気、下回ると不景気を意味する。英フィナンシャルタイムズは「中国金融当局は不動産市場支援のためのパッケージ対策を打ち出したが、短期的に一息つかせる程度で、市場全体の萎縮した心理を回復させるには力不足だ」とし、「需要者が不動産投資ではなく銀行に資金を預けたことで、9月まで銀行預金が記録的に増加した」と報じた。
■軟着陸政策が招いた大混乱
中国の不動産は1998年、朱鎔基首相(当時)がそれまでの住宅配分制度を廃止し、住宅の商品化をスタートさせて以来、約20年間にわたる上昇街道をひた走ってきた。2008年の世界的金融危機直後など一時的な下落を除けば上昇を続け、「不動産不敗神話」までつくられた。
しかし、2021年から中国の不動産バブルが日本で1991年にバブルが崩壊した当時よりも深刻な水準となり、バブル崩壊リスクが高いとの指摘が中国内外で出始めた。日本経済新聞によると、住宅価格の対所得比(PIR)は広東省深セン市が57倍、北京市が55倍で、1990年代のバブル崩壊当時の東京(18倍)をはるかに上回る。国務院(中央政府)発展研究センターマクロ経済研究室副主任を務めた経済学者の任沢平氏は2021年7月、メディアへの寄稿を通じ、2020年時点の中国の住宅時価総額は62兆6000億ドルで、米国(33兆6000億ドル)の2倍、日本(10兆8000億ドル)の6倍だとし、中国政府に不動産市場の軟着陸(ソフトランディング)のための政策立案を求めた。
中国政府は2020年8月から大型不動産業者の負債比率を大幅に下げ、現金保有比率を引き上げる内容の「3つのレッドライン」を提示し、市場に圧力をかけた。 しかし、それが不動産市場混乱のきっかけとなった。 短期間で負債を減らすのが困難だった中国恒大集団など大手不動産開発業者が相次いで資金難に直面し、不動産市場全体が大混乱に陥ったのだ。
開発業者が資金難でスケジュール通りに工事を進められず、入居が無期延期される物件が続出した。2022年初めからは入居予定者が「いつ入居できるか分からないのだから、これ以上長期住宅ローンを返済しない」として、ローン返済拒否運動を起こす事態に発展した。全国で集団返済拒否が起きている物件は300カ所に達するという。
住宅ローン返済拒否は入居予定者に融資した地方商業銀行の破綻につながり、金融危機にまで発展する兆しも見える。さらに、行き過ぎたコロナ対策で消費や投資など経済全体が低迷すると、中国政府は不動産構造調整を一時中断し、市場支援策を打ち出している。