社説
【12月22日付社説】世界中に秘密警察を置く中国、本当に韓国には1カ所だけなのか
中国が世界50カ国以上に反体制活動家を弾圧する秘密警察を置いていることが人権団体などにより暴露され、これを受け韓国政府も実態の把握に乗り出した。中国が韓国政府に知らせない状態で韓国国内で秘密警察を運営しているとの疑惑が事実であれば、これは両国の外交関係に大きな波紋となりかねない深刻な事態だ。
スペインに本部を置く人権団体「セーフガード・ディフェンス」は今年9月と11月の2回にわたり「中国公安当局は少なくとも53カ国で102カ所以上の秘密警察を運営している」と発表した。これらの秘密警察は「海外110サービスステーション」という看板を掲げ、表向きは「自国民のために行政サービスを提供する」と説明しているが、実際は中国の反体制活動家の強制送還と情報収集を行っているという。
中国はこの「海外110サービスステーション」について「コロナの影響で苦しむ自国民のために運転免許証更新などのサービスを行う一種の領事コールセンター」と説明している。しかしたとえ純粋に領事業務を支援する場合でも、正式な公館ではない場所でしかも駐在国が把握しない状態で活動すれば、これは国際法違反であり主権の侵害となる。しかも秘密警察が設置された時期はそのほとんどがコロナの感染拡大前だという。海外で北京オリンピック反対デモが活発に行われていた当時、法的には何の権限もない中国人がデモ隊に直接暴力を振るい大きな問題になったことがある。これらの暴行も中国の海外秘密警察の仕業でなかったか確認する必要があるだろう。
韓国政府が実態把握に乗り出した理由は、セーフガード・ディフェンスの報告書に「江蘇省南通市公安局が韓国でも1カ所の秘密警察を運営している」との記載があるためだ。ちなみにドイツ、カナダ、オランダ、アイルランドなどはすでに秘密警察を摘発して閉鎖命令を出したか、あるいは今も捜査中だ。そのためこれらの国々と比較するとどうしても遅きに失した感はある。韓国は中国共産党による体制宣伝の拠点となり、世界中で閉鎖が続いている「孔子学院」の閉鎖にも消極的だった。韓国政府は急いで実態を把握し、中国秘密警察の存在が確認された場合は即座に閉鎖しなければならない。韓国国内に滞在している中国人の数を考えれば、2カ所以上の秘密警察が存在する可能性も十分考えられるだろう。