コラム
【コラム】「セウォル号・狂牛病よ再び」…韓国亡国左派の夢想だった(上)
大統領選挙で負けた側は、たとえ口先だけであっても勝者に「成功を祈る」とエールを送るのが政治の道義だ。政権が循環してこそ国もうまくいくからだ。今年3月の韓国大統領選挙の日、勝敗が分かれた瞬間、野党になった共に民主党の議員は「5年なんてすぐに過ぎる」と言った。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の任期5年をなかったことにして耐える、という意味だ。政権発足から2カ月がたつと、「共に民主党」議員の口から「弾劾」という単語が飛び出してきた。大統領夫人に対する特検法を共に民主党が発議したのは、尹大統領の就任から100日たったばかりのころだった。
尹錫悦大統領は就任当初からの頻繁な舌禍で、支持率が20%台まで急落した。共に民主党の人々の脳裏にろうそくがともり、狂牛病問題の追憶を呼び戻した。当時の李明博(イ・ミョンバク)政権のように、尹錫悦政権を発足1年目で脳死状態に陥らせるという青写真が描かれた。2008年春のろうそくの主役たちがうごめき始めた。文在寅(ムン・ジェイン)政権で規模と力を育んだ民労総(全国民主労働組合総連盟)は、街頭に決死隊として乗り出す支度を整えた。フェイクニュースで「脳にぶすぶす穴があく」恐怖をスパークさせたMBC放送は、尹錫悦大統領の判読不能な雑談に勝手な字幕を付けてウオーミングアップをした。李明博政権時と違って、国会の議席の構図も野党側が圧倒的に有利だった。
ろうそくクーデターに対する共に民主党の期待が膨れ上がっていくころ、梨泰院惨事が起きた。すさまじい事故で、言葉を失った。ひたすら「どうしてこんなことが…」と嘆息するばかりだった。それが普通の人の感覚だ。民主研究院の副院長という人物の反応は違った。深夜の悲劇の翌日午前、「梨泰院惨事は青瓦台移転のせいで起きた人災」とフェイスブックに書き込んだ。「竜山大統領室に集中する警護人員のせい」と主張した。大勢の若者が命を落とした事故を、尹錫悦政権を攻撃する材料として活用したのだ。「共に民主党」シンクタンクの頭脳回路は、そういうふうに動く。
「金於俊(キム・オジュン)のニュース工場」に出演した共に民主党議員は、惨事の原因として「麻薬との戦争」を挙げた。法務部(省に相当)の韓東勲(ハン・ドンフン)長官が治安のエネルギーを麻薬退治の側に回したせいで、秩序維持がおろそかになった―という主張だ。野党側にとって目障りな韓東勲を巻き込もうと、奇想天外な論理まで登場した。
共に民主党からは、梨泰院惨事が「セウォル号に匹敵する問題」「少なくとも2年は続くイシュー」だという声が上がった。そうなったらうれしいという本音をあらわにしたのだ。かつて文在寅氏が野党党首時代にセウォル号の犠牲者に対して言ったように、梨泰院雑踏事故の犠牲者に対して「申し訳ない。ありがとう」という心情だったのだろう。
金昌均(キム・チャンギュン)論説委員