▲11月8日午前、ソウル市竜山区庁近くのカフェに「梨泰院事故災害心理支援カフェ」が開設されている様子。/写真=NEWSIS

 京畿道南楊州市でパティシエとして働いているイさん(30)は、2017年から2年に1度のペースで民間の心理相談センターにおいてカウンセリングを受けている。ひとたびカウンセリングを始めたら3-6カ月間、一定の間隔で専門家のところに通うという。慢性的なうつの症状を抱えるイさんは「カウンセリングだけで日常の全てのうつを解消することはできないが、それまで知らなかった自分の感情を発見し、自分で自分を助けることができる」と語った。1回のカウンセリングで9万ウォン(現在のレートで約9400円。以下同じ)から10万ウォン(約1万400円)を払っているが、イさんは「高いと思ったことは一度もない」と語った。

 専門家と会って心理相談を受け、メンタルヘルスを整えようという人は大幅に増えている。韓国社会では長年、肉体的な問題で病院を訪れることについては何のはばかりもない一方、心の病を治す問題については外部に明かすのを嫌がる傾向が強かった。だが最近、若い人々を中心に変化が現れつつある。11月22日に保健福祉部(省に相当。福祉部)が明らかにしたところによると、福祉部が運営する全国精神健康福祉センターで昨年受理した相談件数はおよそ235万7500件で、コロナ前の2018年と比べておよそ3.2倍になった。

 専門家らは、2年以上続く新型コロナ問題に加えて最近の梨泰院ハロウィーン惨事まで、大規模な災厄が相次いでおり、不況の中、一人で生きている単身世帯が増えるにつれ社会的孤立感も増しているなど、急激な社会変化で心の健康に問題を抱える人が増えた-と分析している。同時に、専門家のアドバイスを通して実際に効果があった事例も多く共有され、自分がカウンセリングを受けているという事実を自然と外部に明かす例も相次いでいる。

 若い世代ほど、カウンセリングを受けることはもちろん、うつに見舞われたり薬を服用したりといったことを隠さないケースが多い。特にZ世代(1995年以降から2000年代前半に生まれた世代)の場合、幼いころからテレビやユーチューブなどを通して、カウンセリングや心の健康の問題に関するコンテンツと頻繫に接してきた。大学生のキムさん(24)は「ソーシャルメディアでうつや不安などネガティブな感情表現を自然とやってきた世代だからなのか、同じ年ごろの子たちは、カウンセリングを受けに行くことも一般の病院に行くのと同じように受け止めがち」と語った。

 若い層が簡単に利用できるモバイル・カウンセリングアプリが多数存在することも、カウンセリングに至る進入障壁を低める要因となった。アプリを通したカウンセリングの価格は1回(1時間)6万ウォン(約6200円)から7万ウォン(約7300円)という水準で、オフラインのカウンセリングより相対的に安い。実際のカウンセリングはテキストや音声、画像を通して行われるという。ソウル市江西区在住の社会人キムさん(29)は今年8月、カウンセリングアプリを通して会ったカウンセラーに、家族間の対立問題について1時間ほど相談に乗ってもらった。キムさんは「別に時間を取って相談センターに行かなくてもいいし、カウンセラーの記録をきちんと読んで気に入った方を選べるのも利点だった」と語った。

 最近では企業も、若い従業員のためにメンタルヘルスの保護に関する福祉制度を導入する傾向にある。実際、韓国国内のある大手会計法人は、今年の初めから従業員に瞑想(めいそう)アプリの利用クーポンやヨガクラス、カウンセリングサービスなどを無料で提供している。主な学校ごとに用意された校内心理相談センターも生徒で混み合い、数カ月先まで予約が埋まっているケースも多い。ソウルのある大学院に在学しているイムさん(27)は、長期にわたり就職準備をする中でうつと不眠の症状が生じた。昨年10月から大学の心理相談センターで毎週カウンセリングを受けている。イムさんは「最初は助けになるのか疑っていたけど、不眠症も消えて生活リズムも回復する効果があった」と語った。

 一部では、多くの人がカウンセリングなどを通して心の健康を保つ必要が増大したにもかかわらず、費用の問題で「富める者はますます富み、貧しき者はまずます貧する」現象が現れている、と懸念する。大学病院の精神健康医学科や私設の相談センターの正式なカウンセリング料金は、1回につき平均10万ウォン程度が相場で、大学生や低所得層などは依然としてカウンセリングサービスの死角地帯に置かれているのだ。相対的に費用の安いモバイルアプリを通した短期のカウンセリングは、効果が十分でないという指摘も多い。

 ソウル大学心理学科の郭錦珠(クァク・クムジュ)教授は「質の良いカウンセリングを受けようと思ったら、費用がある程度高めに形成されるのは避けられないが、カウンセリングに対する公的補助を強化する必要がある」として「就職準備生や社会人1年生など、環境の変化に直面している人々のためのライフサイクル別のカウンセリングプログラムを、国の主導で拡充することも一つの案」と語った。

キム・スンヒョン記者、ユ・ジェイン記者

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