▲セウォル号事故の被害に対する支援費でヨット旅行をした市民団体もあった。その旅行に事故犠牲者の遺族は参加していなかった。/安山市

 韓国政府と京畿道が2014年に起きたセウォル号沈没事故の犠牲者追悼と遺族支援などのために安山市に支給した「セウォル号被害支援費」の一部が18年6月の地方選挙直前に地元のマンション婦女会などセウォル号と無関係のコミュニティー団体に集中的に支給されていたことが13日までに分かった。

 与党国民の力の徐範洙(ソ・ボムス)国会議員が安山市から提出を受けた資料によると、安山市は地方選3カ月前の18年3月19日から投票日8日前の6月5日までの期間に安山市の25の行政洞全地域のマンション婦女会、奉仕組織、協同組合、市民団体など96団体に合計4億1000万ウォン(約4300万円)余りを支給していた。

 当時の安山市長は共に民主党所属の諸淙吉(チェ・ジョンギル)元市長だったが、党内予備選の競合候補の間でも「選挙法違反ではないか」という指摘が出ていたという。諸元市長は本紙の電話取材に対し、「セウォル号事故から4周忌に当たり、事業費を執行したのであり、選挙とは関係がない」と話した。

 資料によれば、 支給額は団体別に少ないケースで100万ウォン、多いケースで500万ウォンだった。100万ウォンを受け取ったのは40団体、150万-500万ウォンを受け取ったのは56団体だった。大半は「○○洞ソーシャルクラブ」「○○○工房」「○○会」「○○洞を守る会」など町内会や自治委員会などだった。これら団体はクッキーづくり、安山観光ガイドブック製作、小学生対象のドローン写真撮影教室、ペット飼育教室などを行ったと報告した。

 被害支援費を受領した96団体のうち、セウォル号と直接関連する団体は「青少年が夢見る4月」「癒やしの空間・隣人」「ママの黄色いハンカチ」「一洞セウォル号記憶会」の4団体しかなかった。安山市は「セウォル号被害地域の共同体を回復する目的だった」と説明するが、結果的に選挙直前に地域のコミュニティー団体にカネをばらまく状況となった。当時市庁内部や民主党内の競争候補の間でも「不適切だ」「買収行為という誤解を招く恐れがある」という指摘が出ていたことが判明した。

 諸元市長は「選挙と関係なく執行した」と反論。電話取材に対し、「18年4月16日は選挙から2カ月前ではあるが、セウォル号事故の4周忌でもあった。当時それに対し、被害支援費を多く支出した」とした上で、「当時、市議会議長は現在の国民の力の人物だったが、市議会でも特に反対がなかった」と話した。諸元市長は地方選で再選を狙ったが、党内予備選終盤に尹和燮(ユン·ファソプ)前安山市長に公認候補の座を譲った。安山市長は2010年から12年間民主党が占めていたが、今年6月の地方選で国民の力の李民根(イ・ミングン)市長が小差で当選した。

 こうした中、安山市が市民団体に委託した部分だけでなく、市庁が直接企画して施行したセウォル号被害支援費も不当に支出されていたことが分かった。安山市は20年のセウォル号被害支援費として、計20億ウォンを受け取り、7億4000万ウォンは市民団体に執行を委託、残りの12億6000万ウォンを直接執行した。市庁が執行した分のうち、少なくとも3億ウォン余りが不適切に使われていた。安山市の事業精算報告書によるば、安山市はウェブサイト製作に1億8000万ウォン、オンライン成果共有イベントに1億3500万ウォンを支出。セウォル号と関連が薄い音楽会にも3000万ウォンを支出した。「共同体回復」という類似するテーマの研究を年間1億ウォンで同一業者に3年連続で発注した例もあった。安山市が市民団体に委託したセウォル号関連事業も21年(4億7000万ウォン)には30件中21件(2億7000万ウォン)、20年(7億4000万ウォン)には36件中27件(4億6000万ウォン)が本来の目的と異なる形で執行されていた。

 国民の力はセウォル号被害支援費流用疑惑に関連し、「徹底的に調査し、処罰すべきだ」と表明した。梁琴喜(ヤン・グムヒ)首席広報は「一部市民団体の不法流用行為は支援金が完全に犠牲者と遺族のために使われると信じていた国民をだました行為だ。支援金が一部市民団体の特定目的で使われていないかどうか、今からでも徹底的に調査を行い、不法行為に対するしかるべき処罰がなければならない」と述べた。権性東(クォン・ソンドン)議員も「市民団体が他人の死まで横領して自分たちの腹を満たし、従北活動普及闘争資金として使ったものだ」と批判した。尹相現(ユン・サンヒョン)議員も「民主党の事故ビジネスはきょうに始まったことではない。もうだまされる国民はいない」と語った。

 徐範洙議員は本紙の電話取材に対し、「政府と京畿道はセウォル号特別法に基づき、約30億ウォンのセウォル号被害支援費を安山市に来年から3年間追加で支援する予定だ」とし、「徹底した捜査と監査を通じ、これ以上国民の血税が浪費されず、犠牲者追悼と遺族のためにちゃんと使われるようにしなければならない」と指摘した。

ノ・ソクチョ記者

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