コラム
【コラム】世論を操作しようとする韓国の世論調査
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の退陣を要求する集会を主導した「ろうそく勝利転換行動」共同代表のイム・ジンゴル氏は最近、TBSラジオの『金於俊のニュース工場』で「弾劾賛成意見が60%近く出た世論調査が幾つもある」と語った。すると金於俊(キム・オジュン)氏も「私も(世論調査を)見たことがある」と調子を合わせた。
尹大統領弾劾関連の調査が、少し前に本紙の指摘した選管委未登録業者のネクスト・ウイーク・リサーチによる調査のほかも存在する、という話だ。野党支持のネットメディア「ソウルの声」の依頼を受けてデータリサーチが10月初めに実施した調査がある。尹大統領弾劾に共感するという意見は56%で、ネクスト・ウイーク・リサーチの9月の調査(53%)よりも高かった。
ところがこの調査を実施したデータリサーチは、ネクスト・ウイーク・リサーチと同じく、選管委傘下の中央選挙世論調査審議委員会に登録された92社の調査機関一覧に含まれていない。選管委の規制対象から外れるために、選挙関連の項目である「政党支持率」をばっさり省いて調査している点も全く同じだ。世論操作を洗い出すため調査の録音ファイル、応答記録、被調査者の電話番号データベースなど資料一切を6カ月間保管させる選管委の事後統制関連の規定も適用されない。ところが「ソウルの声」は、調査結果を報じる記事で「細かい内容は中央世論調査審議委員会のホームページを参照するとよい」と書いた。選管委未登録業者による調査を、審議を受けた調査であるかのように見せかけた疑いが大いにある。
「ソウルの声」は、ソウル市内の尹大統領自宅前で鐘や太鼓を鳴らしてデモを行い、大統領選挙前にはいわゆる「7時間通話」との関連で金建希(キム・ゴンヒ)夫人から訴訟を起こされたメディアだ。そんなメディアが、選管委未登録業者に依頼して尹大統領弾劾への賛否を問う調査を行った。世論を測定するために調査したのか、それとも反尹陣営に有利な世論を作るために調査したのか、見分けがつかない。
選管委未登録の調査業者であるデータリサーチは、クッキーニュースの依頼で毎月定期調査も行っている。最近発表した調査結果は「李在明(イ・ジェミョン)代表や金湧(キム・ヨン)民主研究院副院長などに対する検察の捜査を信頼しない」58%、「李在明代表の操作は政治弾圧だという主張に同意する」53%、「尹錫悦政権は法治を誤っている」62%などだ。やはり選管委の審議を受けない調査だった。
専門家らは「調査依頼者や調査会社が一部の陣営と結託すれば、特定の世論を拡散させようという意図を持ちかねない」と語る。これを防ぐためには、世論調査制度の改革が急がれる。最近二つの業者が実施した大統領弾劾関連の調査は、あいにくどちらも選管委未登録業者が実施したため、審議を受けなかった。政治に関する全ての調査を選管委が監督し、規制しなければ、世論調査が特定党派の政治的道具として乱用されかねないという不信が大きくなるだろう。
洪永林(ホン・ヨンリム)世論調査専門記者兼データジャーナリズム・チーム長