▲米国の原子力空母「ロナルド・レーガン」(CVN)/韓国海軍提供

 尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は先日、北朝鮮による7回目の核実験に備え米国に事実上の「韓国型核共有概念」となる拡張抑止(核の傘)を要請し、さまざまな方策が議論されていることが12日までに分かった。韓国の領土に米国の核ミサイルなどを配備した過去の戦術核再配備ではなく、米国の核対応戦力を韓半島周辺海域などに常時配備し、韓国にとって核保有と同じレベルの核抑止力を確保するという意味だ。安全保障政策を担当するある韓国政府高官は「韓米間でさまざまなオプションが検討されている」とした上で「米国の核対応戦力が実質的に韓国と一体となって北核に対抗するということだ」と説明した。

 米国の核対応戦力を韓国の防衛に拡張することを意味する「拡張抑止」は核の傘、米国のミサイル防衛、精密打撃兵器などで構成されている。北朝鮮の核兵器には核兵器で対抗することが基本となるため、核兵器を運搬できる米国の戦略資産(兵器)を持続的に韓半島周辺に循環配備することが「画期的な拡張抑止強化策」の一つとされている。米国の核戦力を韓半島上空や周辺海域に空白期間なしに出動あるいは循環配備すれば、事実上の常時配備と同じ効果が得られるということだ。循環配備に名前が上がっている米国の戦略資産としては空母艦隊(米第7艦隊のロナルド・レーガンなど)、B1・B2・B52戦略爆撃機、原子力空母などに加え、準戦略資産とされるF22やF35などのステルス戦闘機も含まれている。

 米軍の戦略爆撃機や空母艦載機などは低威力核兵器を積んで爆撃が可能だ。代表的な戦術核兵器のB61を改良した最新型のB61-12は正確度を高める一方で破壊力を低く抑えた。これは放射能による死の灰など2次的な被害を最小限に抑える「低威力核兵器」と呼ばれている。SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の「トライデントⅡ」に装着される新型低威力核弾頭W76-2も核共有の対象になりそうだ。第2次世界大戦当時、日本の広島に投下された原子力爆弾の半分程度の威力(8キロトン)を持つが、原子力空母に搭載されるため海で待ち伏せもでき、また有事には北朝鮮への攻撃も可能だ。もう一つの低威力核兵器としては5キロトン級核弾頭を装着した巡航ミサイル「トマホーク」もある。トマホークはイージス艦や原子力潜水艦はもちろん、戦略爆撃機や空母艦載機などさまざまなプラットフォームから発射ができる点が強みだ。

 これらの低威力核兵器が韓半島周辺に事実上常時配備された場合、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は「有事に米国は実際に核兵器を使うかもしれない」という恐怖を感じ、核挑発を思いとどまる可能性があるとの見方もある。核共有を通じた「恐怖のバランス」で北朝鮮に対する核抑止力を強化するということだ。

 これと同時にF35K、F15KなどB61-12戦術核爆弾を投下できる韓国空軍の戦闘機をグアムやハワイなどに派遣し、核投下訓練を行うことも核共有の一つの策として浮上している。有事に韓国空軍の戦闘機が米軍と息を合わせ戦術核爆弾を積んで投下できれば、韓米間の核共有効果を今以上に高められるからだ。

 NATO(北大西洋条約機構)式の核共有はNATO加盟5カ国(ドイツ、イタリア、オランド、ベルギー、トルコ)にB61核爆弾150-200発を配備し、有事に米国と共同で運用するというものだが、尹錫悦政権が検討中の「韓国型核共有」はこのNATO式核共有とは異なる。韓国領土の中に戦術核を再配備しない状態でNATO式核共有と同じ効果が得られる方策を見いだすことが尹錫悦政権の構想だ。核には核で対抗するしかないが、韓国が現実的に核抑止力を強化できる方法は限られているからだ。

 独自の核武装は国際社会からの制裁の対象となる。韓国大統領室のある幹部も「検討していない」と明言した。最近は一部で「韓国国内の戦術核再配備」を主張する声もあるが、米国政府の否定的な考えに変わりはないようだ。周辺国の反発や北朝鮮の誤った判断、連鎖核武装などを誘発しかねず、また韓国国内で国論が分裂する恐れもある。だからこそ「韓国型核共有」と米国の戦略資産常時配備などを検討するということだ。

ユ・ヨンウォン軍事専門記者、崔慶韻(チェ・ギョンウン)記者

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