▲人工降雨実験に使われる気象庁の気象航空機。航空機には人工降雨実験に使われる燃焼弾が取り付けられている。写真=朝鮮DB

 文在寅(ムン・ジェイン)政権時代、PM2.5などの微小粒子状物質削減対策の一つとして推進された人工降雨実験に対し、気象庁はこの5年間で191億ウォン(19億6000万円)を投入したが、成果は不十分であることが分かった。人工的に雨を降らせるには、地形的な条件と一定量の雲が必要だが、韓半島(朝鮮半島)はこうした条件に合わないと指摘する声もある。

 与党・国民の力のイ・ジュファン議員が7日に韓国気象庁から受け取った資料によると、気象庁は2018年1月から先月までの5年間で合計83回の人工降雨実験を行ったという。このうち、結果分析中の13件を除き、合計70回の実験で51件を「成功」と気象庁は評価した。しかし、雨が0.1ミリメートルだけ降っても「成功」と集計するため、意味のある数値かどうかについては懐疑的な見方が少なくない。

 気象庁は「2018年に江原道平昌郡や京畿道水原市などで実施した12回の実験のうち、江原道大関嶺で0.1ミリメートルの降雨が発生するなど、成功は計8回だった」と説明した。2019年には15回中11回、2020年には20回中13回、2021年には23回中19回成功したと明らかにした。今年は11回実験を行い、まだ結果は出ていない。191億ウォンをかけて現在までに降らせた雨の量は55ミリメートル前後ということだ。

 雨を降らせるのに成功したとしても、干ばつやPM2.5などの微小粒子状物質に対して効果がある水準ではない。国立気象科学院は約600平方キロメートルを基準に10ミリメートル以上、2時間以上雨が降らなければ、干ばつや高濃度のPM2.5に効果がないと判断している。韓国の気象庁が目指している数値もこれとほぼ同じだ。

 気象庁が成功だと判断した51件の事例のうち、10ミリメートル以上の降雨または降雪に成功したのは5回にとどまっている。事実上、この5回が人工降雨と言える水準で成功した回数だということだ。

 気象庁は、中国からのPM2.5が深刻だった2019年1月当時、文在寅大統領の指示により西海(黄海)上で人工降雨実験を行ったが、雨雲が形成されず、PM2.5削減にも効果が見られずに失敗に終わった。続いて同年8月に忠清南道瑞山沖で中国気象当局と共に人工降雨実験を行ったがこれも失敗、9月には中国で実験を行うことにしていたが、中国側が実験を留保したため、「人工降雨ロケット」などの気象装置で記念写真だけ撮って帰ってきた。

 専門家らは「韓国の気候や地理的条件など、中国とは違う特性を考慮すると、人工降雨技術の導入は容易ではない課題だ」と指摘する。これに加えて、雨を作る触媒の役割をする「ヨウ化銀」から出る毒性のある銀イオンが生物にとって有害な可能性があるという懸念も出ている。ただし、気候変動による人工降雨技術開発は世界的な傾向になっているだけに、技術開発に投資し続けるべきだという見方もある。

 イ・ジュファン議員は「技術開発に力を入れつつ、人工降雨実験による山火事発生や触媒のヨウ化銀の毒性が生物に及ぼす影響などについても研究すべきだ」と述べた。

パク・サンヒョン記者

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