岸田文雄首相が新型コロナにかかった翌日の8月22日夜、オンライン記者会見を開いて「万一あるかもしれない状況に事前に備えた」とし「テレワークで首相の業務を続ける」と語った。地震・津波・豪雨といった自然災害の多い日本は、不意の状況で首相がどれだけ素早く、正常に陣頭指揮できるかをリーダーシップと見なす。即時のオンライン業務転換で、岸田内閣は世論の良い反応を期待したのだろう。

 肝心のオンライン記者会見は奇妙だった。大型モニターに岸田首相が登場するや、20人前後の記者がモニターの両側に立ち並んだ。普段のように、首相が前へ歩いていく方向を開けておいたのだ。モニター前に出てこられないようにする赤い阻止線も見えた。オフライン時と全く同じぶら下がり会見の方式を演出したのだ。その後、岸田首相はオンラインで閣僚や官僚、政治家らとの面談・報告も済ませた。オンライン会議だが、毎日およそ10人ずつ首相官邸へ行って、順番通りにオンライン面談室に入っていった。そこで、モニターに出てくる岸田首相と会うのだ。

 「デジタル後進国の日本らしい」「あまりにもシュール」という批判がオンライン上で沸き起こった。オンライン会議は出席者全員がパソコンやスマートフォンで遠隔接続するのが常識なのに、このやり方は首相だけがオンラインだった。内閣は「セキュリティー上の問題でどうにもならなかった」と釈明した。現在光ケーブルが接続されている場所は、首相が暮らす公邸と執務室がある官邸の間だけだ。主な閣僚会議は徹底したセキュリティーが必要で、わざと各省庁とのネット接続を切ったという。日本テレビは「閣僚会議はそうだとしても、記者会見は公開するためのものではないのか」と指摘した。実際、林芳正外相のオンライン記者会見時は、本人も記者も全員が遠隔接続だった。

 論争の中で8月24日、リモートぶら下がり会見で事故が起きた。大型モニターに、緑色の大きな顔の岸田首相が登場したのだ。まるで宇宙人に扮(ふん)したお笑いタレントのようだった。内閣は「首相公邸の照明を点検せよ」と慌てた。「日本の政治家の中にはかなり多くの宇宙人が存在する」というようなやゆがツイッター上にあふれた。これほどの準備不足にもかかわらず、岸田首相は感染確定直後、なぜ自信満々だったのだろうか。実は少し前まで、公邸と官邸をつなぐ専用線すらなかった。1カ月前に松井官房長官がコロナにかかったことを受け、「しまった」と専用線を引いた。それすらなかったら、岸田首相は10日間なすすべなく「植物首相」との批判を浴びていたはずだ。

 戦争中のウクライナのゼレンスキー大統領よりお粗末な日本の現実だと笑いそうになってやめた。韓国は瑞草区の大統領の自宅と竜山の執務室の間に、専用線を引いてあるだろうか。自宅には必要最小限の照明施設が備えられているだろうか。デジタル大国にふさわしい対策が立ててあることを願うばかりだ。

東京=成好哲(ソン・ホチョル)特派員

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