ソウルで開業しているA弁護士は2年前、顧客の依頼で民事訴訟を起こしたが、これまで法廷に一度も立っていない。労災で死亡した労働者の遺族が損害賠償を求めて起こした訴訟だ。A弁護士は「どうか期日を決めてほしい」と要求したが、裁判所が「刑事事件の結果を待ちたい」として裁判を先送りしているという。刑事事件は依然捜査中で、いつ終結するか見当もつかない状況だという。A弁護士は「家族の生計を担う家長が亡くなり、遺族は経済的に困難に陥っているが、損害賠償訴訟を始めることもできずにいる。判事本人がこんな目に遭ったら、裁判をこんなふうに先延ばしするのか問いたい」と話した。

 裁判所が訴状を受理しても、最初の裁判期日を先送りし、被害と不便を訴える国民が増えている。本紙が全珠恵(チョン・ジュヘ)国会議員(国民の力)を通じて入手した大法院の資料によると、民事事件(合議審)で訴状提出から最初の裁判期日までの所要期間が年々長くなっている。 2016年の120日から17年には117日に一時減ったが、以後毎年増え続け、21年には150日にまで延びた。5年間で30日も延びたことになる。ある弁護士は「最初の裁判期日が遅れれば、順に一審判決、二審判決、最高裁判決まで時期が延びることが避けられない」と話した。

 実際に一審と控訴審の判決はますます遅れている。全国の裁判所では17年時点で民事訴訟(合議審)の一審の平均処理期間は293日だったが、今年上半期には386日に延びた。5年間で93日延びたことになる。民事訴訟の二審の平均処理期間も17年の230日から今年上半期には323日に延びた。判事出身のある弁護士は「裁判所統計には判決が早く出る簡単な事件の裁判も含まれている。国民が体感する裁判遅延ぶりはさらに深刻かもしれない」と語った。別の弁護士は「加速度的に裁判が遅延するようになっている。今後どれほど遅れるか心配だ」と話した。

 このため裁判所には「未済事件」が山積している。全国の裁判所で民事訴訟の一審判決が2年以上出ていない未済事件は16年の4419件から21年の1万2281件へと3倍近くに増えた。ソウル中央地裁では、民事合議審が5年以上判決を下していない「超長期未済事件」が21年に356件に達した。16年(73件)に比べると、5年間で5倍近くに増えた計算だ。ソウル中央地裁の民事合議審は年間で一審を1万5000件を処理したが、昨年は1万1000件にとどまった。ある弁護士は「裁判所が事件を適時に処理しないので、どうしても未済事件が増える」と話した。

 裁判遅延で経済的損失を被ったと訴えるケースもある。中小企業を経営するBさんは、取引先とのトラブルで損害賠償訴訟を起こされた。本人にも過失があったため、裁判を早期に終結させ、賠償金を支払う考えだった。しかし、判決まで2年がかかった。 B氏は「裁判が延びたせいで法定利子をはるかに多く払うことになった」と話した。

 会社員のCさんは職場の同僚と不倫をしたと誤解され、同僚の妻から慰謝料を求める訴訟を起こされた。事件内容は複雑ではなかったが、裁判所が2回変わり、10カ月後に勝訴した。Cさんは「勝訴したが、10カ月の間『不倫女』だと疑われた。裁判所が裁判を急いでくれれば、苦痛は少なくて済んだ」と語った。

 弁護士らは裁判遅延に対する不満を露骨に打ち明ける。ソウル・瑞草洞に事務室を置くD弁護士は「司法研修院の同期会に現職判事の友人が出席したが、『裁判遅延』に対する不満をぶつけられていた。その場では『理由もなく、裁判を延ばす判事が多すぎ、一発殴ってやりたい気持ちだ』という発言まで飛び出した」と話した。

尹柱憲(ユン・ジュホン)記者、ソン・ウォンヒョン記者

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