寄稿
【寄稿】高齢者を差別する韓国社会、リタイアした専門家の活用政策急げ
高齢者人口が1000万人を超える「高齢者大国」目前の韓国で、性差別・人種差別と共に3大差別と呼ばれる年齢差別が社会の各分野に広がっている。韓国人の平均寿命は83.5歳だが、ソウル市内にある有名ホテルの多くはフィットネスクラブ正会員の条件に60歳未満という規定を設けている。高齢者の健康増進を考慮していない不適切な規定だ。新規オープンしたリゾート施設の会員加入にも年齢制限を設けている所がある。高齢社会の現実を無視した措置だと思われる。民間企業だけではない。国家機関でも公務員試験や各種諮問委員会に年齢制限を設けている。こうしたことは「年齢差別不感症」が社会にまん延していることを示している。
高齢層に対する年齢主義の偏見は、高齢人口を生産性の価値だけで見て、無気力で無能な存在だとみなしているからだ。つまり、高齢者が寄与できる能力を過小評価し、高齢者の基本的な人権を侵害しているということだ。2017年の国家人権委員会実態調査資料によると、年齢による差別を経験したという高齢者は21%と集計された。世界保健機関(WHO)は「健康状態などほかの要件を考慮せず、年齢を身体的隔離措置などの唯一の基準とするのは差別だ」と指摘している。
このため、政府に次の通り政策を提案しようと思う。第一に、社会にまん延している高齢者に対する年齢差別を廃止するよう強く勧告し、年齢差別をする企業や機関に対しては不利益を与えるようにすべきだ。
第二に、政府は年齢に関係なく差別されずに働ける「エイジレス(年齢による格差のない)」社会を宣言し、年金受給開始年齢の調整や退職定年延長といった「年齢破壊」政策を開始すべきだ。企業が高齢化という機会を祝福と考えなければならない。シニアに質の高い雇用を提供する肯定的な思考への革新が必要だ。「エイジフレンドリー(高齢者の特性に考慮した)認証制度」を導入し、シニアにやさしいサービス・商品を発売する企業に政府が税制面での恩恵などで支援すべきだ。
第三に、海外に居住するシニア世代の韓国人科学技術者を積極的に受け入れる政策を考慮すべきだ。世界各国にいるリタイアした韓国人科学技術者の中には、滞在費さえあれば祖国のために奉仕できるという人も多い。シニア世代の経験・知識・潜在力を社会・経済の資産として活用できることを若い世代に説得し、国民統合的な次元から海外在住の韓国人シニア専門科学者を受け入れれば、韓国の科学技術の発展を一段階引き上げ、どちらの世代にとっても「ウィンウィン(双方に利益のある)」政策になるだろう。
最近、米国の大学ではボランティア教授(volunteer professor)制度を導入し、定年で退任した教授に最小限のスペースと報酬を支給して定年後も専門知識を大学や学生に提供できるようにしている。韓国の大学や企業でも、シニア専門家や教授に最小限でも適切な待遇をし、技術的経験と知識を生かすのが望ましい。高齢者の精神的・肉体的・社会的健康増進プログラム開発・支援も重要だが、国民統合の見地から高齢世代に対する理解と認識向上が必要な時期だと言えるだろう。
キム・ユンシン漢陽大学医学部名誉教授