▲済州道西帰浦市の国家台風センター台風状況室に集まり、昨年韓半島に上陸した台風14号「チャントゥ」の進路を再確認する台風予報官たち。6月7日撮影。

 「台風予報官は台風を戦争のように取り扱います。普段は監視・警戒勤務ですが韓半島が影響圏内に入ると戦時状況に突入し、台風が消え去るまで24時間体制でその位置と強さを追跡します。国民にできるだけ被害が発生しないことが目標です」

 昨年1年間に韓国には「ルピート(9号)」「オーマイス(12号)」「チャンス(14号)」の三つの台風が上陸、あるいは直接の影響を及ぼしたが、人命被害は出なかった。正確な予報が被害を最小限に抑える大きな役割を果たしたのだ。国ごとの台風予測レベルを示す「72時間台風進路予報誤差」において韓国は一昨年185キロを記録し、米国(240キロ)と日本(225キロ)を初めて上回っていたことが先日発表された。2010年の時点で韓国の台風距離誤差は349キロに達していたが、それから10年で韓国よりも人工衛星技術が発達した先進国を追い抜いたのだ。

 この成果は韓国に4人しかいない気象庁台風予報官によるものだ。キム・ソンス予報官(49)、キム・ヨンナム予報官(47)、キム・ドンジン予報官(46)、チェ・ウィス予報官(44)の4人だ。先日済州道西帰浦市の国家台風センターで取材に応じた4人は「予報官たちは毎年夏に訪れる台風と1年中戦争する準備をしている」「異常気象で台風の進路予測は難しくなったが、今年も人命被害が出ないよう正確度を高めることが目標」と述べた。

 台風予報官らが勤務する国家台風センターは済州道西帰浦市南原邑の丘の上にある。一種の前方見張り所だ。台風の影響圏に最初に入る済州道南端で、見張りの兵士が立つのと同じように台風を待ち構えているのだ。

 実際に彼らの勤務方式は最前線の兵士とよく似ている。通常は4交代で勤務し、世界各地で発生する台風の発生や発達状況を「監視」する。韓半島が間接影響圏となる北緯25度、東経135度以内に台風が入れば「警戒」に転換し、予報官2人ずつの3交代体制となる。「北緯28度、東経132度」に近づけば「非常1級」体制となり、事実上の戦争が始まる。24時間体制で台風の位置や強度を追跡し、韓半島が台風の影響圏内から抜け出すまで災害気象対応チーム、国家気象衛星センター、気象レーダーセンター、数値モデリングセンターなどと台風情報をリアルタイムで共有する。キム・ヨンナム予報官は「台風が近づけば台風情報は3時間、台風の位置は1時間ごとに気象速報として発表する。文字通り『戦争状態』だ」と語る。

 台風は単一気象現象の中で被害の規模が最も大きい災害だ。人命被害に直結するだけに予報官たちもヒヤリとする瞬間に直面するときが多い。キム・ドンジン予報官によると、台風のど真ん中のしばし静穏な状態を意味する「台風の目」という表現はそれなりに理由があるという。キム・ドンジン予報官は「2017年に台風『ナーリー』(6号)で済州道に大きな被害が発生したとき、『台風の目』は西帰浦市表善面を通過していました。強風の中で一瞬静かになったので、漁師たちは壊れた船を修理しに防波堤に出ました。城山気象台の職員がすぐに発見して避難させましたが、30分後には非常に強い暴風雨が再び済州を飲み込み、大きな被害が発生しました」と説明した。予報官らが最もやりがいを感じるときも「人命被害が出ず、財産上の被害も少なかったとき」だという。チェ・ウィス予報官は「昨年他国に比べて韓国の予報がより正確だったという事実よりも、人命被害が全くなかったという結果を聞いたときの方がうれしかった」と笑顔で語った。

 台風予報官らは冬には「冬季訓練」を行い翌年の台風に備える。中国は極地軌道に4機の人工衛星を飛ばし台風の構造や強さを分析しているが、韓国の衛星は「千里眼」1基しかない。韓国政府からの支援は不十分だが、その一方で冬の間に台風予報官らを台風関連の国際会議などに参加させ、数値モデルを練り上げ精緻化するなどして埋め合わせている。予報官らにとって心配の種は複数の気象アプリが公開され、不正確な情報が広がることだ。キム・ソンス予報官は「海外の気象アプリの情報と気象庁の予報を比較し、混乱が生じるケースがあるが、韓国の台風については韓国気象庁が分析した情報が最も正確ということを知ってもらえたらうれしい」と述べた。

 彼らは台風との最前線で死闘を続けているが、その待遇はあまり良くない。センターは近くに公共交通機関も通っていない場所にあるため、これといった飲食店もなく、職員たちの昼食も1人の調理師が全て担当している。平日の夕食や週末になると職員たちはインスタントラーメンや弁当で食事を解決する。「へき地勤務手当」も月3万ウォン(約3100円)で、これは1日当たり1000ウォン(約105円)だ。これでは職員を募集しても希望者は1人も来ない。それでも予報官たちは「国家台風センターを去るつもりはない」と語る。「台風関連の業務に関して言えば、専門性を持つ予報官1人の離脱は国全体からすれば大きな損失です。少なくとも韓国では『台風で命を失った』と言われないように実力でもっと『武装』します」

パク・サンヒョン記者

ホーム TOP