コラム
【コラム】デマに終わった「月城原発トリチウム流出」
月城原子力発電所トリチウム(三重水素)民間調査団は今月4日、第2次調査結果を発表した。月城原発の敷地内からトリチウムが一部漏れ出したことを確認したが、意味を成すだけの外部流出はなかったという内容だった。まだ最終結論が出たわけではないが、昨年2月に調査団が発足してから1年以上かけて調査した結果だ。共に民主党では「衝撃的」との表現で国民に恐怖感を与えたが、11ページにわたる調査結果の報道資料を見ても、近隣住民たちに直接的な被害を与えるほどの内容は見当たらない。
月城原発トリチウム問題は昨年1月、一部報道機関が提起した疑惑を共に民主党が取り上げたことに端を発する。共に民主党の議員たちは「隣接する地域の住民の体内からトリチウムが検出されている。トリチウムは人工放射性物質だ」と主張した。だが、一般の水素より原子核の重さが3倍重いトリチウムは自然界にも存在する物質だ。
韓国電力公社の子会社である韓国水力原子力発電と原子力安全委員会は当時、外部へのトリチウム流出はないと発表した。原子力専門家らも同じ意見だった。しかし、そうした科学的見解は無視された。共に民主党の議員たちは数回にわたり記者会見を開き、「真相を究明する」と言って月城原発にまで行った。そうして脱原発ムードを作り、党内に老朽化した原発に関する安全調査タスクフォース(TF=作業部会)まで設けた。
月城原発トリチウム問題は、文在寅(ムン・ジェイン)政権の脫原発政策を正当化する手段として積極的に利用された。共に民主党の議員たちは「月城1号機の閉鎖決定は国民の安全を守るための当然の措置だったことが確認された出来事だ」と言った。7000億ウォン(現在のレートで約710億円)をかけて保守点検された月城1号機は寿命が残っていたのにもかかわらず、2019年12月に早期閉鎖された。当時の李洛淵(イ・ナギョン)共に民主党代表は「1年以上も月城原発を監査していながら、放射性物質の流出を確認できなかった監査院の監査結果は納得しがたい」と監査院を攻撃した。月城原発の監査は経済性評価に関するものであり、トリチウム流出調査は監査院の業務ではないのにもかかわらず、そうした発言をしたものだ。
昨年2月に設置された民間調査団は、同年3月からトリチウム流出を調査している。調査団は第2次発表まで31回の会議、408件の資料請求、59件の現場調査を実施した。一部の貯蔵タンクに漏れがあったことが確認されたが、調査団は「地下水を通じて敷地外部に意味を成すようなトリチウムの流出は確認されなかった」と発表した。近隣の海岸や河川におけるトリチウム濃度は基準値以下だった。共に民主党が無視した専門家の意見を1年以上経ってからあらためて確認したことになる。
政治家たちが浴びせた無責任な言葉で被害を受けるのは常に国民だ。月城原発近くの住民たちは「根拠のないデマで村は瀕死(ひんし)の状態だ」と訴えた。この騒動で近隣の新羅時代の文武大王陵などの史跡や海岸から観光客が消えたという。狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)に関するデマや、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)電磁波に関するデマを経験したのにもかかわらず、同じことが繰り返され続けている。
ユ・ジハン記者