中国の李克強首相が27日、中国国内外の物流を円滑にするよう公の席で指示した。中国の一部都市ではコロナの流入を防ぐためトラックの移動を制限するなど経済への悪影響が広がっているため、首相自ら直接解決を促した形だ。上海封鎖などで最近中国では企業の貨物や個人向けの宅配が必要な時に配達されないケースが増えており、また感染対策目的の移動制限などで中国人の不満も高まっていることから、李首相の対応については「企業が厳しい状況に追い込まれていることへの否定的な世論を意識した」との分析もある。

 28日付の人民日報によると、李首相は前日開催した国務院商務委員会の会議で物流対策について議論した。会議の席で李首相は「コロナの感染対策と物流保証を総合的に推進し、部門や地域間の協力を強化することで国際・国内物流を円滑にすべきだ」「物流ネットワークの効果的な運用を保証し、高速道路の料金所やサービスエリアを開くように監督せよ」などと指示した。さらに「工場や港湾の運営を円滑化させ、宅配など物流企業が必要な時に活動できるようにせよ」とも指示した。国務院はこの日、宅配企業向けに「年末までの付加価値税免除」「交通運輸業への1000億人民元(約2兆円)規模の低利の融資提供」などの対策も発表した。

 中国政府が「ゼロコロナ」を強調し、またコロナの感染拡大を防げなかった政府の担当者を処罰したことから、中国では地方政府に行くほど厳しいコロナ対策が行われる傾向がある。たとえば外からのトラック流入が禁じられ、高速道路も閉鎖された影響でトラックが数百キロ回り道するケースも相次いでいる。また移動先の都市ごとに新たな通行証やコロナ検査証明書などの提示が求められることも車の移動を妨げている。今月18日に劉鶴・副総理主催の会議で「全国共通の通行証制度」「トラックに対する移動の保証」などの方針が打ち出されたことや、また李首相が今回のようにメディアに出たことも中央政府の指示が地方にまでしっかりと浸透していないためとみられる。

 上海封鎖が1カ月以上続き、また北京でも大規模なコロナ検査が行われているため、メーデーを中心とした中国の連休期間(4月30日-5月4日)も観光業など内需の景気悪化が予想されている。中国交通運輸部(省に相当)は28日に会見を行い、「今年のメーデー連休期間の移動人口は1億人ほどとみられ、昨年よりも62%ほど減少する」と予想した。

北京=パク・スチャン特派員

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