自動車産業
雇用維持に必死の現代自労組「部品会社の仕事を回してくれ」 会社側に要求
韓国の完成車メーカーの労働組合が、会社側に「仕事をもっと割り当ててほしい」と要求し始めた。現代自動車の労働組合は、電気自動車(EV)時代に入って労働力需要が減少し始めたことから、雇用を維持するために系列会社の仕事を回すよう主張している。
今年、完成車メーカーの労組が賃金・団体交渉の核心議題として持ち出したのは、賃上げを含む「生産割り当て」と「雇用の安定」だ。現代自労組は今年、団体交渉の要求案に、「雇用安定のためにEVの中核部品である駆動システム(PEモジュール)などを現代自が直接製造できるようにしてほしい」とする内容を盛り込んだ。
PEモジュールは電気モーター、インバーター、減速機、電流制御を統合したEVの駆動システムで、グループの部品会社である現代モービスが生産し、現代自と起亜に納品している。現代モービスは最近、現代自グループのEV販売台数が増加していることを受け、PEモジュールの生産量を増やすために投資を拡大しているが、こうした状況で現代自労組がPEモジュールを自社で組み立てられるよう要求し始めたのだ。
現代自労組は、都心航空モビリティー(UAM)や目的基盤モビリティー(PBV)など、未来のモビリティー製品を韓国国内で生産できるよう、新工場の建設と投資拡大を要求している。起亜の労組も「EVの中核部品の外注化とモジュール化によって雇用不安が高まっている」として「韓国国内の工場でEVの中核部品を生産し、増設のために投資することが必要だ」と主張している。
電動化への転換が加速する中、エンジンや変速機(トランスミッション)などEVに必要のない部品を生産するエンジン工場は危機感を強めている。韓国で完成車を生産する現代自・起亜・韓国GM・ルノーコリア・双竜自の5社はいずれもエンジン工場を運営しているが、EVの販売が増加すれば、エンジンの生産は規模縮小が避けられない。
現代自の関係者は「本社で新たなエンジンを開発すれば、エンジン工場にも引き続き仕事が割り当てられるが、本社がエンジンの新規開発を事実上中断しているため、エンジンの生産は減少し続けている」と話した。韓国GMの関係者も「韓国国内の工場では内燃機関モデルだけを生産しているため、現在は昌原のエンジン工場が稼働している。しかし、本社がEVへの転換を加速化させているため、5-10年後はエンジン工場の仕事があるかどうか断言できない状況」と話した。
ルノーコリアと双竜自の場合、電動化への転換速度が遅く、労組はさほど危機感を感じていない状態だが、両社の労組も同様に、安定的に仕事を確保するための方策を講じるよう会社側に要求している。
雇用安定に向けた労組の要求は高まっているが、EVの需要が拡大しているため人員削減は避けられないというのが業界の見通しだ。EVは搭載される部品の数が少ない上に、中核部品を外注化またはモジュール化するケースが多いからだ。韓国の完成車業界の関係者は「韓国の完成車メーカーでは定年退職者が年間数百人に達するが、生産分野で新規採用は進んでいない」として「このような形の自然減によって、事実上の人員削減が行われている」と話した。
ヨン・ソンオク記者