▲今年1月末にソウル市鍾路区の地下鉄鍾路5街駅周辺の路上に発生した横3メートル、縦2メートル、深さ1メートルのシンクホール(陥没穴)。警察は「地下に埋設されていた上下水道管が破損し、水が漏れ出したことが原因ではないか」と推定している。/聯合ニュース

 3月9日午後、全羅北道完山区平和洞のある飲食店前の路上に深いところで最大3メートルに達する大きな穴が出現した。「シンクホール(陥没穴)」だ。飲食店の入り口からわずか数歩しか離れておらず、大きな事故が発生してもおかしくない状況だった。今月3日には光州広域市西区のある交差点でも深さ2メートルのシンクホールが出現し、道路を走っていた乗用車のタイヤが穴に落ち込み車が大きく破損した。一歩間違えば大事故につながりかねない瞬間だった。今年1月末にはソウル市江西区麻谷洞のある工事現場周辺を歩いていた20代女性が突然できた深さ3メートルのシンクホールに落ちてしまった。

 

 国土交通部(省に相当)によると、毎年全国の100-200カ所でこのようなシンクホールが発生するという。そのうち約50%は地下に埋められた水道管の損傷が原因だ。老朽化の影響で破損し、あるいはひびが入った水道管から水が漏れ出して周辺の地中に広がり、地面が陥没してしまうためだ。とりわけ最近のように寒さが和らぐ時期にはシンクホールが発生する危険性がさらに高い。冬の間ずっと地下で凍っていた地中が溶け、硬度が弱まり地面が陥没しやすくなるのだ。

 専門家はシンクホールの主な原因とされる老朽化した水道管について「その状態を綿密に点検すれば、大規模な事故は事前に防ぐことができる」と指摘する。しかしいつ製造されたかさえ把握できていない地下水道管の長さは全国で6万キロに達する。国土交通部が管理する「地下空間統合地図」によると、全国の上下水道管は総延長が38万キロにもなるが、うち15%は管理が行われていない「闇の水道管」だという。

 東新大学建築工学科のチェ・ミョンギ教授は「古い都心ほど年式の分からない水道管が多い」とした上で「事実上、足下に地雷が埋設されているわけだが、地方自治体は事故が起こって初めて関心を持ち始めるのが実情だ」と指摘する。ソウル市の関係者も「古い都心の中区や鍾路区にはいつ埋設されたか分からない配管があるが、そのほとんどは40年以上前の老朽化した水道管と推定している」と述べた。このような現状について国土交通部は「地方自治体が数十年前に水道管を埋設する際、しっかりと記録を残さなかったためだ」と説明している。

 建設・土木業界などからは「工事を行う際、自治体が持っている図面に基づいて地面を掘り返すと、突拍子もない場所に水道管が埋められていることがある」などの話がよく聞かれる。延世大学土木工学科のチョ・ウォンチョル名誉教授によると、自治体の図面には何年度にどんな材料の水道管を埋めたか必ず記載しなければならないが、その記録が最初からないか、あっても間違っているケースが珍しくないという。

 専門家によると、シンクホール対策に必要な安全上の規定は今なお不十分なようだ。大小さまざまなシンクホール関連の事故が数年前から起こり始めたことを受け、2018年には「地下安全管理に関する特別法」が施行された。この法律の規定によると、各自治体は水道管などの地下施設を年に1回以上点検しなければならない。ただその一方で「普段から地盤沈下への懸念がない場合は点検を省略できる」とする例外規定もあるため、どの自治体もたまに随時点検を行うだけで、予算や人材不足などを理由に定期点検は行っていないという。ある自治体は現在、老朽化した水道管を新しいものに交換しているが、これも巨額の費用がかかるためさほど積極的ではない。ソウル市の場合、今年中に58キロの老朽化した上水道管を交換する費用として915億ウォン(約89億5000万円)の予算を確保している。

 専門家は「巨額の費用がネックとなり、老朽化した水道管を全て交換するのは現実的に不可能だが、それなら定期点検を義務づけるべきだ」と求めている。韓国地下安全協会のリュ・キジョン会長は「老朽化が疑われる水道管のある場所は地面を掘って標本を確認するか、水道管の中に監視カメラ付きの小型ロボットなどを投入して地道に点検する必要がある」「多くの自治体はそれほど強い意思はなく、予算もあまり投入しないが、人命被害が発生してから後悔しても遅い」とコメントした。

カン・ウリャン記者

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