▲「国民の力」の李俊錫代表が10日、光州市南区の白雲交差点で「声援に感謝いたします」と書かれたプラカードを持ち、大統領選の勝利に対する感謝のあいさつをしているところ。/写真=NEWSIS

 韓国の保守系最大野党「国民の力」が5年ぶりに政権を奪還したが、党の一部で李俊錫(イ・ジュンソク)代表の「ジェンダー戦略」を巡って論争が起きている。無難に勝つだろうという期待と違って得票差0.73%という薄氷の勝利だったのは、李代表が主導したイデナム(20代男性)中心の選挙戦略の逆風が原因、というのだ。これに対し李代表は11日、「操縦席に座る資格のない人々がこんなことを言う」と反論した。尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏の関係者も「大統領選の結果を誤って分析してはならない」と、党内対立が拡大することを警戒した。

 李代表は今回の選挙戦で、「女性家族部(省に相当。女家部)廃止」に代表される、いわゆるジェンダー戦略を推し進めた。20代男性を中心に2030世代を糾合し、ここに60代以上の既存支持層を合わせ、4050世代中心の与党「共に民主党」に対する「世代包囲」をかけようというのだ。ところが、テレビ3社の出口調査の結果、20代男性の58.7%が尹氏を支持する一方で、20代女性は58%が「共に民主党」の李在明(イ・ジェミョン)候補を支持したことが判明した。また、20代から50代までの世代で、女性はいずれも李候補の支持率の方が高かった。李代表の戦略が、逆に「共に民主党」側への女性票結集という形で現れた、というのが一部の主張だ。陳重権(チン・ジュングォン)元東洋大学教授は「20代女性を分断した部分について、李代表の責任を厳しく問うべき」と語った。

 李代表が選挙にあまりにも自信を示し、支持層結集の妨げになった-という指摘もある。李代表は選挙直前、「5-8ポイントの支持率格差を維持している」「多いときは10ポイントまで差が開くこともあり得る」と語った。逆に「共に民主党」は、候補と指導部が総出で「1ポイント差の薄氷の勝負」だとして支持層の総結集に乗り出した。李代表が目標値を30%に定めた全羅道地方の得票率も、実際の選挙では半分にも届かなかった(12.9%)。「国民の力」の関係者は「“頭を上げたらその瞬間負ける”というのは選挙の常識」だとし、「李代表があまりに楽観的に語り、支持層の結集が弱まった側面はある」と語った。

 「国民の力」内部が騒がしくなるや、「共に民主党」も「李俊錫たたき」に乗った。6月の地方選挙まで20・30代女性の支持の勢いを維持したいという狙いがあるものと解釈されている。「共に民主党」のパク・チヒョン女性委員会副委員長は11日、李代表について「完全に失敗した。政界から去るべきではないかという思いだ」と語った。

 これに対し李代表は11日、フェイスブックに映画『ハドソン川の奇跡』の一場面をアップし、「なぜ(ニューヨークの)ラガーディア(空港)にすぐ回航して着陸を試みなかったんですか! 試みていたらよかったでしょう! シミュレーターでテストしました!」とし、「通常、操縦席に座る資格のない人々がこんなことを言う」とつづった。この映画は、乗客155人を乗せた旅客機がバードストライクにより左右のエンジンの推力を失い、機長が回航ではなくハドソン川への不時着水を行って乗客全員を救った実話に基づいた作品だ。つまり、墜落している「国民の力」を自分が蘇らせた、というわけだ。

 「国民の力」の河泰慶(ハ・テギョン)議員も同日、フェイスブックに「水におぼれる政党、青年らが救ってくれたのに、失敗うんぬんと言っている」として、「かつての第18代大統領選挙の際、当時のセヌリ党は、出口調査で2030男女の得票率がいずれも30%前後だった。しかし今回の大統領選挙では、2030男性から55%、2030女性から40%に迫る支持を受けた。これは胸いっぱいになる勝利」と書き込んだ。尹氏に最も近い側近の一人に挙げられる権性東(クォン・ソンドン)議員も11日、フェイスブックに、女家部廃止公約と関連して「この決断は女家部に対する韓国国民の世論と時代精神に基づくもの」だとし、「大統領選挙の結果の原因を誤って分析してはならない」と書き込んだ。

趙儀俊(チョ・ウィジュン)記者

ホーム TOP