記者手帳
【記者手帳】韓国の貿易赤字、放置してもよいのか
韓国の貿易収支は昨年12月に続き、今年1月も赤字を記録した。輸出が12月に607億4000万ドル、1月に553億2000万ドルとそれぞれの月で過去最高を記録したにもかかわらず、輸入額には届かず、2カ月連続の貿易赤字となった。
産業通商資源部が2月1日に発表した1月の輸出入動向は資料が37ページから成り、その大部分を輸出成果を具体的に羅列することに割いている。原油・天然ガスなどエネルギー価格の高騰による2カ月連続貿易赤字を分析した部分は相対的に簡潔だった。しかも政府は「貿易赤字は日本、フランスなど他国も同じだ」といった具合に記述した。最近の赤字は「一時的」なものだたから、あまり心配するなというニュアンスも漂った。
世界的にエネルギー価格が高騰し、韓国と産業構造が似た国も貿易赤字であれば安心してよいという論理だろうか。1バレル=90ドルに迫った原油価格、年間で50%以上上昇した原油輸入価格、前年同月比で91億ドル急増した1月の3大エネルギー源輸入額よりも、むしろ韓国政府の安易な状況判断が不安になる。
足掛け3年続く新型コロナ、ウクライナを巡るロシアと西側の緊張は、世界的な供給難を悪化させるだけでなく、原油・ガス・石炭の価格までつり上げている。輸出が過去最高でも「20カ月ぶりの貿易赤字転落」という
苦々しい韓国の貿易実績はそうした対外リスクの結果だ。しかし、政府の資料のどこにも危機をどのように克服するのかという内容は見当たらない。輸出は順調なのだから構わないと見かけを繕うばかりだ。
実のところ、過去最高の輸出額もエネルギー価格高騰による側面がある。昨年下半期から輸出額が急増した石油化学品目は高値で輸入した原油などを加工して輸出する構造だ。加工による付加価値を販売価格に十分反映できなければ、輸出企業の帳簿は赤字が積み上がることになる。過去最高の輸出実績は、政府の自画自賛が見掛け倒しかもしれないことを示している。
輸出に依存する大韓民国で貿易赤字は直ちに対外信用度の低下という問題につながりかねない。政府は想像したくない最悪のシナリオ、例えばロシアがウクライナに侵攻するとか、原油価格は120ドルを突破するといった状況、それによって韓国の貿易赤字幅がさらに拡大する事態に備える計画を持ち合わせているのか。計画があるならば、全国民に直ちに公表すべきだ。まだ状況別の対応策を立てていないならば、その作業を急ぐべきだ。それがエネルギーと原材料の大半を輸入に依存する国の政府が今、国民に示すべき行動だ。
世宗=チョン・ジュンボム記者