▲農村で穀物を食い荒らす鳥たちを追い払うため設置されたタカの形をしたたこ。/読者提供

 文在寅(ムン・ジェイン)政権の重点事業であるセマングム水上太陽光が「鳥ふんジレンマ」から抜け出せない状況が続いている。昨年6月に全羅北道群山市のセマングム湖に設置された研究用太陽光パネルに渡り鳥のふんが高く積み上がる問題が浮上してから半年近く過ぎたが、韓国政府は今もこれといった対策を提示できない。

 韓国産業技術試験院やセマングム開発庁などによると、セマングム水上太陽光における鳥のふん害対策について同開発庁は試験院に「鳥に物理的な苦痛を与えない非接触方式」を条件とし、これまで計四つのアイデアが提示された。▲渡り鳥が恐れる猛禽(もうきん)類の形をしたたこの設置▲低周波の騒音設備設置▲レーザー装備の設置▲鳥の休み場設置-などだ。当初鳥のふん害問題は研究課題にはなかったが、太陽光に対するふん害への懸念を指摘した本紙の報道(2021年8月9日付A1面)後に検討が始まった。

 

 まず「鳥に視覚的な恐怖を与える」という次元で太陽光パネルの間にタカやワシの形をしたたこを設置する案が浮上した。農村で穀物を食べる小さい鳥を追い払うためかかしを立てておくように、猛禽類の形をしたたこを設置し渡り鳥がパネルに止まれないようにするものだ。水上太陽光が設置されるセマングム湖は面積だけで汝矣島の10倍に相当する28平方キロメートルに達する上に、パネルも525万枚が設置される予定だ。ここに「かかしのタカ」を設置するには数千-数万のたこが必要になる。管理も簡単ではない。そのため「非現実的」との指摘が以前から出ていた。

 鳥が嫌う騒音やレーザーなど鳥類退治設備の設置は環境部(省に相当)が太陽光発電設備を許認可する際に厳しく禁じた。環境部は騒音やレーザーはもちろん鳥の視野を妨害する照明、さらにはパネルに止まれないように設置するとがった形の「バードワイヤー」の使用も認めていない。

 環境に優しいエネルギーを生産するために鳥たちの安定した休息を妨害するとか、視覚的・聴覚的ストレスを与える方法で鳥を追い払うのは不適切との指摘もある。仁川大学のソン・ヤンホ教授は「発電所を建設する際にいかにしてエネルギーを効率的に生産するか考える必要があるが、セマングム太陽光は毎年セマングムにやって来る数千-数万羽の渡り鳥をどうやって追い払うか、あるいは別の場所に誘引するかという問題により関心を払わねばならない。まさに主客転倒の状況に陥っている」と指摘した。

 セマングム水上太陽光事業の環境影響評価を担当した環境部、そしてセマングム一帯の事業全ての許認可権を持つセマングム開発庁は「非接触方式」というガイドラインを作成し、試験院に宿題を出すこと以外は何もしていない。鳥を追い払わなければ太陽光はしっかり作動せず、鳥を追い払えば生態系破壊という非難を受ける。水上太陽光の管理・運営主体で、韓国水力原子力と現代グローバルが100%の株式を保有する特殊目的法人(SPC)「セマングム・ソーラー・パワー」も「現時点で対策は見いだせていない」と明らかにした。

 2100メガワット級で2025年までに建設されるセマングム水上太陽光は当初今年4月までに1200メガワットを第1次として完成・稼働させる計画だった。しかし電気を送る送変電システムの入札で問題が生じ、まだ工事を始めることもできていない。送変電システムの入札に問題がなければ2カ月後には稼働するはずの発電団地だったが、今なお鳥のふん害対策がないのだ。これは水上太陽光の稼働に問題となる部分を事前に検討もせず拙速に事業を推進したことを意味する。韓国政府はセマングム水上太陽光事業を推進する際「(パネルを汚染する物質は)雨水で十分に洗い落とせるので特別な洗浄などは必要ない」と説明していた。「パネルを設置さえすれば何もしなくても問題ない」という間違った判断をしていたのだ。

 「渡り鳥の渡来地に大規模太陽光発電所を設置する発想自体が最初から無理だった」との指摘もある。鳥に危害を加える方法で追い払う以外に数十万羽の渡り鳥のパネルへの接近を阻止する方途がないからだ。韓国科学技術院(KAIST)のチョン・ヨンフン教授は「政府の『太陽光を増やす』という欲のせいで、結局はセマングムにやって来る渡り鳥と戦うはめになった」と指摘した。

パク・サンヒョン記者

ホーム TOP