▲LGエナジーソリューションの梧倉バッテリー工場(忠清北道清州市)/朝鮮日報DB

 最近米高官・政治家が韓国を訪れると必ず立ち寄る場所がある。それはLGエナジーソリューション、SKオン、サムスンSDIなど韓国のバッテリーメーカーだ。米国務省でサプライチェーン再編を担当するホセ・フェルナンデス国務次官(経済成長・エネルギー・環境担当)は昨年12月、韓国政府関係者との会談日程を最小化し、韓国バッテリーメーカー3社の本社を全て訪れたという。2カ月前に訪韓したキャサリン・タイ 米通商代表部(USTR)代表も主要企業との面談にバッテリーメーカーの役員を呼んだ。同じ時期にジョン・オソフ上院議員(民主党・ジョージア州選出)も韓国を訪れ、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長と会った。バッテリー業界幹部は「米国はバッテリーを半導体のような重要な未来産業の核心軸とみており、韓国を重要なパートナーとして認識し始めた。韓米のバッテリー分野での協力関係を『サプライチェーン同盟』『経済安全保障同盟』に発展させるチャンスだ」と語った。

 

■合弁投資27兆ウォン、EV400万台生産可能

 米自動車大手「ビッグスリー」(GM、フォード、ステランティス)と韓国バッテリー3社の合弁による投資額は合計27兆ウォン(約2兆5700億円)で、韓国バッテリー業界による独自投資を含めると30兆ウォンに達すると推定される。生産規模は年330GWh(ギガワット時)で、電気自動車(EV)400万台以上を生産できる量だ。昨年1490万台規模の米自動車市場でEVが占める割合は3%(43万台)だが、その10倍に達する規模だ。

 先頭はGMとLGエナジーソリューションによる同盟で、4工場での生産規模は140GWhに達する見通しだ。フォードとSKは129GWh、ステランティスはLG、サムスンSDIとそれぞれ1工場、計63GWh規模となる。ビッグスリーだけでなく、現代自動車、ホンダなども米国にバッテリー工場を建設するため、韓国メーカーを選ぶ可能性が高い。急速に成長する米EV産業が韓国のバッテリーに依存することになる。米国で自動車産業は少なくとも180万人を直接・間接雇用する重要製造業であり、米国の国内総生産(GDP)の3%を占める。バイデン政権は米自動車産業をEVに転換するという強い意志を表明している。中国の安値攻勢に押されている韓国のバッテリー素材メーカーが事業を拡大するチャンスも開かれた。実際にポスコケミカルとエコプロBMは正極材、エンケムは電解液を生産する工場をそれぞれ米国に建設することを決めた。

■サプライチェーン同盟まで拡大すべき

 バッテリーは過去に全世界の安全保障を揺るがした石油に代わる重要な存在であり、韓中日のメーカーがリードしている。特にバッテリーはかさが大きく重い上、EV生産コストの30%を占め、米自動車メーカーは現地での合弁生産を通じ、安定的な供給を確保しようとしている。中国と覇権争いを繰り広げている米国は韓国と日本をバッテリー分野のパートナーとして選んでいる。日本のバッテリー業界で有力なパナソニックはテスラ以外との協業に消極的な状況にあり、韓国メーカーは攻撃的な投資でチャンスの時代が到来した。

 問題は韓国のバッテリーメーカーが素材を中国に依存していることだ。特にバッテリーの2大素材である正極材の材料となる前駆体(ニッケル、コバルト、マンガンを混合した粉末)、負極材を生産する黒鉛の大半は中国から調達している。バッテリー業界関係者は「米国のバッテリー工場でも中国から輸入した素材を使わざるを得ない。当面は米国も仕方ないと考えるだろうが、サプライチェーンの多角化を要求する可能性が高い」と述べた。実際にバイデン政権は昨年、サムスン電子など米国に進出した主要半導体メーカーい営業秘密を含むサプライチェーン情報を要求した。

 専門家は今回の機会に米国との「サプライチェーン同盟」で戦線を拡大すべきだと助言する。例えば、米自動車メーカーと米国、オーストラリア、東南アジアなど中国以外の地域でコバルト、リチウム、ニッケル、黒鉛などの開発事業に参入すれば、中国への依存度を軽減できる。瑞靖大のパク・チョルワン教授は「韓米のバッテリー協力強化で新たなサプライチェーン構築の機会が訪れた。しかし、やろうとして容易にできることでなく、米国メーカーと長期戦略を緻密に立てるべきだ」と指摘した。

柳井(リュ・ジョン)記者

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