社会総合
韓国政府の集団免疫言及に専門家ら「感染放置するのか」「検討すべき時期」
新型コロナウイルス感染症のオミクロン株が本格的に広がっている局面で、政府が突然、「集団免疫」への期待を示した。オミクロン株感染拡大は今、始まったところだが、「集団免疫獲得が期待される」と先走って話したものだ。集団免疫とは、少なくとも全国民の70%以上がワクチン接種を完了するか、自然に新型コロナウイルスに感染して、大量感染を防ぐことができる状況のことをいう。
中央事故収拾本部の孫映レ(ソン・ヨンレ)社会戦略班長は25日、メディアとのインタビューで「海外の一部の国ではオミクロン株がピークを過ぎ、集団免疫を獲得したと思うか」と問われると、「そのような現象は韓国でも期待できるだろう」と答えた。韓国でもオミクロン株の大流行が過ぎれば集団免疫獲得が可能だということだ。青瓦台(大統領府)は昨年8月、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が今や「集団免疫」という表現を使わないことについて、「デルタ株が流行しているので、そのような単語は使わないのが適切だと思う」と語っていた。昨年上半期からワクチン接種率70-80%を目標に「集団免疫」を推進していたが、下半期に感染力が強く、致死率が高いデルタ株が出現すると、政府内ではそれ以降、「集団免疫」という言葉が事実上のタブーとなった。ところが、それから5カ月を経て、政府内から再び「集団免疫」という表現が飛び出したのだ。
これに対して、一部では「政府は、オミクロン株拡大を阻止するのが難しいから、事実上の自然感染を誘導しているのか」と疑う声が上がっている。政府が26日から隔離期間を短縮し、自己検査キットの使用を推奨したことについても、「こうした対策は感染拡大を加速化させる方向にあるもの」(大韓感染学会ペク・キョンラン理事長)であることから、実は集団感染を前提とした政策である可能性があるということだ。
専門家らの見解はさまざまだ。「集団免疫により『ウィズコロナ』を越えて『コロナフリー(free)』へと進む機会」(大韓ワクチン学会マ・サンヒョク副会長)という見解がある一方で、「たとえオミクロン株の重症化率が低くても、感染者が激増すれば、数に限りのある病床数が足りなくなる可能性がある」(高麗大学九老病院感染内科キム・ウジュ教授)という意見もある。嘉泉大学吉病院感染内科のオム・ジュンシク教授は「『オミクロン株にかかった方がいい」という意見には、それに伴って犠牲者が出ても甘受するという社会的合意が必要だ」と話した。オミクロン株拡大がピークに達している英国や米国などでも、重症化率は低いが、「多数の重症者と死亡者が発生した」「警戒心を緩めてはならない」と警告されているとのことだ。
米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長もこのほど、世界経済フォーラム(WEF)でのスピーチで、「オミクロン株拡大が集団免疫につながるかどうかは答えるのが難しい」と述べた。「すべての人々が望む『生きているウイルスを利用したワクチン接種(自然感染)』になるかは答えるのが難しい問題だ」と語り、性急な集団免疫論を警戒したものだ。
キム・ギョンウン記者