2007年、中国の胡錦濤国家主席が政治局会議で「インターネット上の世論・思想建設を強化せよ」と指示した。中央政府はすぐに「インターネット評論員部隊を組織したい」と復命した。国家レベルの「世論操作団」をつくろうというのだ。中国のネット人口が2億人を突破したころだった。これに先立ち2004年末ごろ、中国の地方政府がコメント1件当たり「5毛(現在のレートで約9円)」出すとしてコメント操作チームを募集した。これが「5毛党」だ。2015年には共産主義青年団が地方組織に対し、1000万人を超える「コメント団」を選抜せよと指示したという。こうした操作団が毎年4億8000万件のコメントを付けている-とハーバード大学の研究陣が明かした(2017年)。

 

 最近、習近平国家主席が「共同富裕」を強調しているのは、それだけ貧富の格差が深刻なことを意味する。中国の所得不平等は「太平天国の乱」を呼んだ清朝末期に似ている、という内部報告書もある。腐敗もまた慢性的だ。共産党は、こうした累積する不満が10億のネットユーザーを通してせきを切ったかのようにあふれ出る状況を恐れている。毛沢東は「政権を覆そうと思ったら、まず世論を形成せよ」と語った。必然的に、世論操作に総力を挙げることになる。

 今年に入って、ウイグル族が登場して「人権弾圧はない」「米国の主張はたわごと」と語る動画が数千本も出現した。自発的に撮ったもののように見えた。ところが分析してみると、同じ表現や主張が繰り返されていた。地域宣伝機関が作った動画だった。国際ジャーナリスト連盟(IFJ)の報告書は「コロナ問題以降、中国政府は国際メディアを買収して肯定的イメージをつくろうとした」と伝えた。中国国内にとどまらず、海外世論の操作にも乗り出しているのだ。

 中国政府が民間企業と契約し、ツイッターやフェイスブックなどソーシャルメディア(会員制交流サイト)上で世論操作を行った-とニューヨーク・タイムズ(NYT)紙が先日報じた。中国の最高権力者レベルの人物による性暴力を告発したテニス選手の彭帥がアップした笑顔の写真には「いいね」が殺到しているが、「操作」の可能性があるのだ。契約条件として「中国が指定するコンテンツを月10回、最上段に表示させること」なども挙げられていたという。これまで中国当局が主導していた世論操作の一部を、民間への外注に回すわけだ。世界で使われているソーシャルメディアの「いいね」を直接操作するのに負担を感じたのかもしれない。

 習近平が一言発しただけで、瞬く間に数千件の「いいね」が付くケースも多い。韓国の大統領選挙で世論操作を行ったドルイドキング一味の「キングクラブ」のように、自動プログラムが動いているのではないか。2019年のオーストラリア総選挙を前に中国が政党などをサイバー攻撃した、という外信の報道があった。中国の世論操作が一体どこまで及んでいるのか分からない。

アン・ヨンヒョン論説委員

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