【写真】京畿道高陽市のソウル市立昇華院で行われた葬儀の様子。遺体が入った棺に向かって遺族が礼をしている。14日撮影。/キム・ミョンジン記者

 作家の故・朴婉緒(パク・ワンソ)氏は6・25のときに叔父と兄を亡くした。兄は事故で銃傷を受け、自宅に戻ったが数カ月後に亡くなった。この兄は左翼活動に参加した経歴があったため、その死を周囲に伝えることができず大急ぎで埋葬した。朴氏は当時の様子を「死をごくりと飲み込んだ」と表現した。正式な手続きを経ず兄の葬儀を行った後遺症は後に『お釈迦(しゃか)様の近く』などの小説に描かれるようになった。

 コロナの犠牲者に対しては「先に火葬し、後から葬儀を行う」のが韓国政府の指針だ。これに同意して初めて葬儀を支援する費用が受け取れるため、コロナによる犠牲者の遺族は80%がこの指針に従った。そのため遺族から「まともに追悼もできず送り出すのはあまりにも過酷だ」といった不満の声が相次いだ。生前も隔離状態で治療を受け、死んだ後も葬儀さえまともにできないのは人倫に反するというのだ。

 「私は死を世話する人間です」の著者カン・ボンヒ氏は昨年2月、大邱でコロナの感染が拡大した際、コロナによって死亡した23人の遺体を回収した。カン氏はこの本の中で「コロナによる死者は他のいかなる死とも正反対」と説明した。通常は死後24時間経過しなければ火葬はできないが、コロナの場合は24時間以内に火葬を終えなければならない。カン氏は「コロナで亡くなった方々は死とは言えない」「防疫マニュアルに従えば悲しむ暇もない、哀悼も受けられない死」と表現した。遺族も濃厚接触者となるケースが多く、葬儀さえまともにできないケースが多いのだ。

 「先に火葬」という葬儀の指針はコロナに対する情報が十分でなかった流行初期に定められた。科学的な根拠もない過度な指針のため今では「改正すべきだ」という意見も多い。世界保健機関(WHO)や米国の疾病予防管理センター(CDC)も同じ意見を出している。WHOは「エボラ出血熱やコレラ以外の遺体は一般的に感染性がない」として「コロナによる犠牲者の遺体は火葬すべきという考えは迷信に過ぎない」と説明した。CDCも「コロナに感染したかどうかは埋葬か火葬かという選択に何の影響も及ぼさない」と指摘した。遺体を密封処理し、棺の中に入れればウイルスが流出する可能性はないだろう。それでも「火葬場の職員は全身防護服を着用して遺体を運ばねばならない」という指針は今も残っている。これなどまさに非科学的だ。

 今年10月の韓国疾病管理庁に対する国政監査で「『先に火葬』という指針は行き過ぎだ」という指摘があった。これに対して鄭銀敬(チョン・ウンギョン)庁長は「指針を見直している」と答弁したが、今のところ新たな内容は全く伝えられていない。遺族にトラウマを残さないよう臨終と火葬の手続きに立ち会えるようにするのが合理的だ。今後はさまざまなところに残る非科学的な部分を一つずつでもなくしていかねばならない。

キム・ミンチョル論説委員

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