「中国のある地方政府が顔認識技術を利用し、同地域を訪れた記者や留学生たちをリアルタイム監視するシステムを構築している」とロイター通信が先月30日、報道した。このシステムは記者を「危険度」によって赤・黄・緑に分類し、防犯カメラを使って位置をリアルタイムで追跡する、とも書かれている。現在、このシステム開発がどの程度まで進んでいるのかは不明だ。しかし、実際にこのシステムが導入されて作動すれば、国際社会を中心に中国の人権弾圧に対する批判が高まるものと見られている。

 

 ロイター通信によると、中国の河南省政府は今年7月29日、政府調達サイトに河南省地域を訪れた特定人物の個人情報を収集できるシステムの構築計画案を掲載したとのことだ。200以上の事業提案書には、写真や顔の特徴などで人物を検索・確認できるデータベースを構築し、記者・外国人学生・不法居住状態の外国人女性の追跡を望んでいると書かれている。記者の場合は赤・黄・緑の3段階に分類し、記者が河南省内のホテルに宿泊したり、河南省に来る航空券を買ったりすると、警報が鳴るように求めている。河南省当局はこの提案書で、「疑わしい人物は追跡・取り締まりされなければならず、動的な分析とリスク評価が行われなければならない。記者は(等級)分類に従って管理されなければならない」としている。

 河南省政府は今年9月17日、中国最大のソフトウェア開発企業の一つ「東軟(Neusoft)」と契約した。東軟は中国地方政府の社会保障システム構築に携わってきた情報技術(IT)企業で、顔認識システムにより受給者を確認するサービスを提供してきた。ロイター通信は「契約書には11月中旬までにシステム構築を完了しなければならないと書かれているが、現在システムが稼働しているかどうかは確認されておらず、河南省政府などは取材に応じていない」と伝えている。

 河南省当局が監視プロジェクト入札公告をした時期は、洪水を取材するため一部の外信記者らが河南省鄭州市を訪れた直後だ。中国の一部のネットユーザーや環球時報などの愛国主義メディアが先頭に立って、「外信各社は中国の否定的な面ばかりを報道する」と非難し、取材記者たちの実名を公表して批判した時期と重なる。

 今も中国公安(警察)当局は外国人記者や外交官などの行動をモニタリングしている。彼らが居住地以外の地域を訪れた場合、外事担当公安が携帯電話に連絡して訪問目的を尋ねたり、宿泊ホテルに行ったりする場合もしばしばある。これまではホテルにチェックインした時に到着したことが公安に通知されていたが、列車など長距離公共交通機関の利用が実名制に変更されたことから、予約と同時に動線が分かるようになった。顔認識システムはさらに踏み込んで、リアルタイムで位置確認をしようという試みと見られる。

 中国では、顔認識システムは既に普遍化段階に入っている。中国政府は2019年から移動通信加入時に顔の情報を登録させている。マンション出入りの登録や携帯電話アプリ加入にも身分証明書以外に顔の情報を要求するケースが多い。この顔情報データベースが中国の街中の至る所にある防犯カメラ6億台(英国のIT専門コンサルティング会社Comparitechの推算)や人工知能(AI)とつながれば、中国当局が望む対象をリアルタイムで追跡・監視できる。

 中国当局は顔認識システムを通じて手配犯・誘拐犯を検挙した事例を挙げ、適用範囲をさらに拡大させる考えだ。中国共産党政治局は今年1月、「顔認識システム・AIなどを利用して統治能力を強化すべきだ」という意見を採択した。中国の習近平国家主席の側近で、公安分野を担当する中国共産党共産党中央政法委員会の陳一新秘書長は今年9月に広東省を訪れた際、「最近、中国内外の安保環境はますます複雑化し、不安定・不確実になっている」「画像監視や統制範囲を広げ、ビッグデータを活用してリスク要因を監視・予測しなければならない」と述べた。しかし、複数の国際人権機関では、こうした政策の拡大が、批判勢力や少数民族を中国政権が監視・抑圧する「5G(第5世代移動通信システム)によるデジタル・レーニン主義」につながることを懸念している。

北京=パク・スチャン特派員

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