経済総合
原発と特殊部隊が積み上げた信頼…UAEの空も韓国が守る
韓国製迎撃ミサイル「天弓Ⅱ」のアラブ首長国連邦(UAE)への輸出が事実上決まった。これは世界の武器市場で大きな影響力を持つ中東への本格的な輸出の橋頭堡(ほ)を確保し、これまで足踏み状態にあった防衛関連の大規模輸出の道を切り開いた点で大きな意味がある。
まだ最終契約の段階は残っているが、これまで2年以上にわたり詳細な内容に至るまで交渉を続けてきただけに、韓国政府は「年内の最終契約も特に困難はない」と考えている。4兆1500億ウォン(約4000億円)という額はこれまで韓国の防衛関連分野で記録した年間の最高輸出額に近い規模だ。過去における防衛関連の単一事業輸出で最高額はインドネシアへの潜水艦輸出などおよそ1兆ウォン(約970億円)規模だった。
今回のUAEとの契約には李明博(イ・ミョンバク)政権当時の原発輸出やアーク部隊の派兵などによる良好な関係が前向きに作用したという。2010年に来韓したUAE王子は韓国の特殊部隊によるデモンストレーションに深い感銘を受け、自国の特殊部隊への訓練を要請したという。これにより2011年からアーク部隊が交代でUAEに派遣され、軍事外交の役割をしっかりと果たしてきた。また2009年には韓国がUAEの原発建設を受注し、これと関連して軍事協力に向けた覚書も取り交わした。
今回輸出が実現した天弓Ⅱは老朽化した地対空迎撃ミサイル「ホーク」の次に韓国国防科学研究所(ADD)、LIGネクスウィン、ハンファシステムなどが開発した中距離対空ミサイルだ。航空機を撃墜する天弓と敵の弾道ミサイルを迎撃する天弓Ⅱの2種類があるが、今回UAEが導入するのは天弓Ⅱだ。UAEは合計10以上の砲台を導入するという。
イランによるミサイル攻撃に警戒を強めてきたUAEは米国製のパトリオット、イスラエルのバラク8、そして韓国の天弓Ⅱを候補として迎撃ミサイルの導入を進めてきたという。そのうちパトリオットは価格が非常に高いため早くから脱落し、今回イスラエルのバラク8との最終競争で勝利を収めたことになる。ある韓国軍筋は「世界市場でその性能が認められているイスラエル製迎撃ミサイルとの競争で勝ったのは意味が大きい」とコメントした。今回の輸出実現には元仁哲(ウォン・インチョル)合同参謀本部議長と姜恩瑚(カン・ウンホ)防衛事業庁長が先日UAEを訪問するなど、防衛産業のセールスを行ってきた韓国政府と韓国軍幹部らの活動も大きく作用したという。
これまで中東への武器輸出はUAEなど輸入国側の要請を受けエンバーゴ(報道制限)が維持されてきたが、その点で今回UAEの発表については「かなり異例」との見方もある。ある韓国政府筋は「UAEは今回の発表直前、事前に韓国政府高官にも連絡してきた」と伝えた上で「異例の公表だが、そこに何らかの意図は見られない」との見方を示した。
天弓Ⅱは交戦統制所、3次元位相配列レーダー、垂直発射台などで構成されており、発射台1基当たり8発のミサイルが搭載されている。最大迎撃高度は15-20キロで、これはパトリオットPAC3 CRI(最大迎撃高度20キロ)よりもやや低い。航空機撃墜用の天弓Ⅰの最大射程距離は40キロだ。
天弓Ⅱの最高速度はマッハ5(音速の5倍)。全長4メートル、重さ400キロ、ミサイル1発の価格は約15億ウォン(約1億4500万円)ほどだ。2017年の試験発射では100%の命中率を記録したこともある。
ユ・ヨンウォン軍事専門記者